12: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/06(月) 01:57:24.26 ID:l+3sZe1fo
妖精さんが、洞穴の出口の脇を指さした。
そこには大きな横穴がある。妖精さんは私がそこを見たのを確かめるとまたさっきのガオーをやってから、羽をパタパタさせて空中で横になって眠る真似をした。
「トロールさんはそこで寝てるの?」
私が言うと、妖精さんはパチパチ、っと手をたたいてくれる。そっか、トロールさんって、太陽の光を浴びたらいけないんだったよね。
こんな大きな横穴なら、トロールさんの大きな体も入るだろうな。よく見たら、藁みたいなものがたくさん敷き詰めてあって、寝心地の良さそうだった。
妖精さんはまた私の袖口を引っ張って、その大穴横まで私を連れていく。それから、そのすぐ横にあった私の身長の倍くらいある板みたいな岩を指さした。
「私は、ここ?」
そう聞いてみたら妖精さんはうなずいて、トロールさんの穴から藁みたいな草を、小さな体でひと塊抱えてその岩の上にパラパラっと置いた。
そっか、ここに藁を敷いて、それで寝なさい、ってことね。
私はそのことに気が付いて、トロールさんの横穴にたくさんあった草を少しだけもらって岩の上に敷き詰めた。
うん、これならちょっとは眠れそうかな…
そう思って藁の上に体を横にしてみる。だけど、ちくちくしちゃって、あんまり寝心地はよくなかった。
そんなことを思ったら、急に住んでいたうちのベッドが恋しくなってしまった。
ベッドだけじゃない…母さんの料理とか、父さんのあったかい手とか、母さんのやさしい匂いとか…
でも…でも、母さんも父さんも、もういない。村に帰っても何をされるかわからない…
私は、ここに居るしかないんだ…
気が付かないうちに、私はポロポロ泣き出してしまっていた。
それでも、私はここで眠るしかない…だから、いい子だから、眠ろうよ、私…
私はそう自分に言い聞かせて、唇をギュッと噛んで、手をギュッと握って目を閉じた。
父さん…母さん…
私、寂しいよう…
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