15: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/06(月) 23:31:48.31 ID:l+3sZe1fo
「ん…」
体痛い…えっと、私…どうしたんだっけ…?
ぼやける目をこすってあたりを見回す。
そこはごつごつした岩ばかりの見知らぬ場所で、遠くには日を浴びて光り輝いている大きな木と、草原が見える。
いつもの家じゃない…道具屋のおばちゃんの家でもない…ここは、えっと…
すこし混乱していた私の耳にパタパタという羽音が聞こえてきた。
見ると、妖精さんが手に何かをもって私の顔を覗き込んでいた。
そうだ…私、昨日の夜に、トロールさんにここに連れてこられて、それで…
私はそのことに気が付いて改めてあたりを見回す。すると、あの横穴に大きな体をすっぽりとはめ込んで寝息を立てているトロールさんの姿を見つけた。
やっぱり、夢じゃなかった…良いことなのか、悪いことなのかわからないけど。
ううん、父さんと母さんが死んじゃったのは、夢だった、って方がいいに決まってる、か。
妖精さんがパタパタと羽を鳴らして私の目の前に降り立った。そうだった、ご挨拶しないと。
「おはよう、妖精さん」
私が言うと、妖精さんはニコっと笑って抱えていた何かを私に差し出してきた。
それは、大きくて濃い色に熟した桑の実だった。
「くれるの?」
私が聞くと妖精さんはパタパタっと飛んで、そばにあった岩の上に降り立つ。
そこには、木の実や魚が大きな葉っぱの上に置かれていた。
そっか…トロールさんが採ってきてくれたんだ…お、お礼、言った方がいいかな?
あ、でも、トロールさん、寝てるし…今はやめておこうか…
私はベッド代わりにしていた岩板の上から立ち上がる。ギシギシと体が音を立てて痛む。
うぅ、やっぱり寝心地はよくなかったな…
そんなことを思いながら私は妖精さんのところに行く。
桑の実に、木苺に、アケビもある。この泥んこになっているのはお芋かな?見たことない形してるけど…きっとそうだな。
魚は川でよく見かけるやつだ。家でも食べたことある…だけど、このままってわけにはいかないよね。
ちゃんと焼かないと、私には無理だ。
私は妖精さんに渡してもらった桑の実を食べてみる。甘酸っぱい味が口の中に広がって、少しだけ幸せな気分になる。
「おいしい」
そういってみたら、木苺をリンゴみたいにかじっていた妖精さんも笑ってくれた。
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