22: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/07(火) 22:32:22.22 ID:hySjMWKmo
「へぇー、この山にこんな洞窟あったんだ」
拾った薪を抱えたお姉さんがそう声を上げている。近くに住んでいた私も知らなかったくらいだし、お姉さんが知らないのも無理はないだろうな。
妖精さんはお姉さんと身振り手振りで一生懸命に話をしている。
お姉さんはそれをみてなんだか楽しそうに笑っているし、悪い人、って感じもしない。
良い人なんだろうな、ってそう感じた。
ほどなくして私たちはトロールさんのベッドのある場所にたどり着いた。
ゴロゴロという、トロールさんのいびきが聞こえる。
とたん、ガラガラっと音がした。見るとお姉さんがちょっと驚いたみたいな表情をしていた。
次の瞬間、お姉さんは腰の剣に手をかける。
「ちょ!待って、お姉さん!」
私はとっさにお姉さんに飛びついた。
「ちょ、え、だって…こいつ、トロールじゃ…!?」
「このトロールさんに助けてもらったの!トロールさんは良いトロールさんなんだよ!」
「い、良いトロール?」
「そう!魔王ってやつのところで兵隊をしていたのが悪いトロールで、このトロールさんはそうじゃない普通のトロールさんなの!」
「ふ、ふつうのトロールってバカでかい棍棒振り回して襲ってくる方だと思うんだけど…」
「え、そうなの?じゃ、じゃぁ、普通じゃないトロールさん、なのかな?」
妖精さんも、パタパタ宙に浮きながらお姉さんを押しとどめてくれる。
「ンガッ…」
急に、そんな低くて重苦しい音がしたと思ったら、ノソッとトロールさんが起き上った。
お姉さんはちょっとビクっとなって、二、三歩後ずさりをする。
「オ前、誰ダ?」
トロールさんはすぐにお姉さんに気が付いて、鋭い目をしてゴロゴロする声で聞いた。
「あ、あたしは、も、元国王軍の剣士だ!い、今はフリーの傭兵だけど…」
「国王軍?」
お姉さんの言葉に、トロールさんの目つきがさらに鋭くなった。ちょ、ちょっと待ってよ!
「待って、トロールさん!この人、外で倒れてたの!旅の途中でお腹がすいて、それで動けなくなってたんだって!悪い人じゃないと思うんだ!」
私はお姉さんの前に立ってトロールさんに言った。お姉さんだって、きっと私と一緒なんだ。
国王軍を辞めさせられて、行くところもなくて困ってたんだ、ってそう思ったから。きっと、トロールさんは力になってくれるはず…。
私の言葉に、トロールさんは「ンンン…」とお腹に響いてくるくらいに低い声でうなった。それからまた低い声で
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