4: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/05(日) 22:43:12.64 ID:DDpn0WSro
そして、どれくらい時間が経ったか、袋から出してもらえた私は、ここにいた。
村長たちは私に鎖と手枷をつけて、せめてもの情けだ、と言ってダガーを持たせて、そそくさと山を下りて行ってしまった。
そう、早い話、私は生贄、というものにされたようだった。
ズシン、ズシン、という足音がさらに大きく近くなっている。
私は手の中のダガーを握りしめた。
トロールは私を食べるのかな?
それとも、男の子たちが捕まえた虫にするみたいに、脚を折ったり手をもいだりして殺すのかな?
どっちにしても、きっと痛くて苦しいんだろう…
それなら、いっそ…
私はそう思って、ダガーを自分の喉に突き立てようと思ったけど、それすらも怖くてできっこない。
私、死にたくないよ…父さんと母さんも死んじゃって、寂しいしつらいけど、でも…死んじゃうのも怖いよ…!
ズシン、ズシン、と足音が本当にそばまでやってきた。
そう思って体をこわばらせていたら、高い木の上に、何かがのぞいた。
芝生か毛のようなものにおおわれ、大きな耳があって、大きな口には鋭い歯が並んでいて、大きな目にはギラギラと光る瞳を持っている。
ト、ト、ト、トロールだ…!
私はかなうはずもないのに、手に持っていたダガーをトロールに向けた。
4メートルかそれくらいありそうなトロールは、ズシン、ズシンとまっすぐに私のところに向かってくる。
生えていた木を丁寧によけて私のすぐそばまで来たトロールはその大きな瞳で私を見下ろした。
ガクガクと体が震える…助けて…誰か、助けて…!父さん、母さん!!!
あんまりにも体の震えがひどくって、私は手に持っていたダガーを取り落してしまった。
それを見たから、なのか、トロールは私めがけてグッとその腕を伸ばしてきた。
死んじゃう、死んじゃう!
私は、あまりの恐怖で目を閉じて体を丸めてうずくまった。
私の体を何かが包み込んだ、と思ったら、ふわりと宙に浮かんだような気配があった。
食べられるんだ…そう思って覚悟を決めた私は、そのままギュッと丸めた体に力を込めた。
痛いのはイヤ…せめて、わからないように殺して…お願い!
「…ナニシテル?」
低くゴモゴモとした声が聞こえた。
い、い、今の、何…?
私は、ドキドキする胸を押さえながら、恐る恐る顔を上げた。
するとそこには、さっき木の上に見えていた大きな顔がすぐ目の前にあった。
大きくて恐ろしい両の瞳が、私をじっと見据えている。
978Res/1629.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。