54: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/14(火) 21:27:53.41 ID:rEfyuFNso
「おい女…今俺たちを見て笑ったか?」
「あぁ、ごめん、つい可笑しくってさ」
「何が可笑しいって?言えよ、次第によっちゃ、今すぐその首ハネ飛ばしてやる」
「えー?そっちの魔道士は何か知ってるみたいよ?」
お姉さんはそう言って、後ろの方にいた黒装束の男を顎でしゃくって言った。
男たちの視線が黒装束の男に集まる。もちろん私もつられるように男を見ていた。
黒装束の男は、真っ青な顔をしてガタガタと震えていた。
え、どうしたの…?お姉さんの呪い、そんなに危ないものなの…?
「お、おい、なんだよ、どうしたってんだ?」
「あれがなんだか知ってるのか?」
男たちも黒装束に矢継ぎ早にそう問いかけた。
すると黒装束の男は、ガタガタと歯を鳴らしながら、まるで首を絞められているみたいなか細い声で、絞り出すように言った。
「も、も、も、紋章…ま、魔王の…紋章…!」
え?
い、い、い、今…魔王って、言った、の…?
私は、ゾクっと背中を駆ける抜ける悪寒に震えた。勇者の男たちも、急に表情がこわばり引きつった笑顔を浮かべている。
「お、おい、嘘だろ?」
「どう見たって人間だぜ?あ、あれだろ、タトゥーかなんかだろ?」
「そ、そうだぜ…魔王は勇者に倒されたんだろ…?」
男たちのやり取り聞いて、お姉さんが口を開いた。
「えぇ?なに、あんたら、勇者のくせに魔王の顔も知らないんだ?」
その言葉に、男たちがギクリ、と体を硬直させた。
そうだよね…勇者なら、魔王と戦っているから、もし、あの呪いの痕が魔王のその、紋章ってやつなら、知らないはずがない…
「おかしいなぁ、勇者様よう?魔王を倒したんだろ?でもおかしいな、あたしはあんたの顔に見覚えはないし、あんたもあたしを知らないってんだ」
不意に、お姉さんの左の腕がほのかに赤く光を放ち始めた。
これ、何…?何が始まるの!?
「どうしてだろうなぁ?」
お姉さんは低く、まるで呪いの言葉みたいにおどろおどろしい声でそう言った。次の瞬間、お姉さんの腕の赤い光がパッと輝いた。
お姉さんの左腕が、みるみるうちに青黒く染まりだし、爪が鋭く伸びる。
腕を染め上げたその色がやがてお姉さんの左肩に至ると、お姉さんの背中から服を突き破り大きくて真っ黒な翼が姿を表した。
色は、肩から首へと這い上がり、お姉さんの左の目のあたりまで進んで止まった。
でも、その色に染められたお姉さんの目は、もう、人間の目じゃなかった。トカゲか、羊の目みたいに縦長の、血のような真っ赤な瞳が浮かんでいた。
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