6: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/05(日) 22:45:41.99 ID:DDpn0WSro
「コノ山、アブナイ。スグ帰レ」
トロールは私にそう言った。
あ、あれ…わ、私…こ、殺されないの…?
呆然とする私を、トロールは見下ろした。
「オ前、帰ラナイカ?」
「あの、その…私っ…」
私は、足にまかれた鎖を解きながら声を上げる。
私、帰ってもいいのかな…?で、でも、私、もし逃げてきたって村の人に知られたら、またここに置き去りにされる…。
「でも、でも…私!」
「ココ、危ナイ」
トロールはそういうと、また私を手の平につかみ上げた。
「あの…えっと…」
「コノ森、熊イル。狼モイル。人間一人、危ナイ」
「あの…!た、食べたり、しないですか!?」
「熊モ狼モ、人間食ベル」
「そ、そうじゃなくて!その、トロールさんは、私を食べたりしないですか!?」
「オイハ、良イトロール。人間食ワナイ。魔王様ノトロール、人間、食ウ」
魔王…確か、この世界を支配しようとしていた、っていう、悪しき存在…
ここから遥か東にある山脈の向こう側に広がる魔界の王様で、私たちの世界とずっと戦争をしていた。
でも、それも半年ほど前に、勇者様、っていう人が、王国の大軍を率いて魔王の城を攻め落として、戦争は終わった、って話だ。
トロールには、良いトロールと悪いトロールがいるの?
そっか、私たちの世界を支配しようとした魔王って人に従っているのが悪いトロールで、そうじゃないのが良いトロールってこと?
本当に…本当に、このトロールは、私を食べないの…?
私は、半信半疑のまま、でもいつの間にかすっかり抜けてしまった腰のせいで逃げることもできず、
トロールの手の平に乗せられて、山の奥へと連れていかれた。
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