830: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/07(土) 13:47:21.31 ID:wlHWTXrso
「まあとにかく、俺達はもうニ、三、見て回らなきゃならねえ町や村がある。捜索にそう時間は割けねえから、来てくれて助かったよ。
そこにある『特級要人』の容姿も俺達は知らねえしな」
「うん…見かけを知っていた方が探しやすいもんね」
私は隊長さんの言葉にそう応えて、相変わらず固まっている竜娘ちゃんを見た。
彼女は、ハッとして私を見ると、
「そ、そうですよね…」
とかすれた小さな声で言った。
まぁ、仕方ないよね…私も竜娘ちゃんの立場なら、いろいろと思い悩むに違いないし…
ここはなるだけ、そっとしておいてあげよう。
「あぁ、それとな。このチビも一緒に連れ回してやってくれ」
私が竜娘ちゃんに視線を向けていたら、不意に隊長さんはそう付け加える。
見れば、隊長さんは柔らかな笑顔で、練り干しの串を両手に握り締めている零号ちゃんに頭を振っていた。
「零号ちゃんを?」
隊長さんの言葉に、大尉さんがそう反応する。
「ああ。もうじき一年だ。こいつも、あそこが恋しいらしくてな。尋ね人が見つかったら、一緒に連れて帰ってやってくれ」
「私ね、本当はもう少し見て回りたいなって思うところもあるんだけど、でもやっぱり早く姫ちゃんに会いたいんだ!」
零号ちゃんは、満面の笑みでそう言う。
「そっか。あんたが出立してすぐだったもんなぁ、産まれたの」
十六号さんがなんだか感慨深げにそう口にした。
そう、お姉さんはあの戦いからしばらくして、一人の赤ん坊を産み落とした。
お姉さんと同じ癖のある黒い髪で、それから、瞳は琥珀のように輝く栗色の、大きな声でギャンギャン泣き続ける、とっても元気な女の子だ。
そんな零号ちゃんと十六号さんの話を聞きつけた隊長さんはふと、
「しかしなぁ…話を聞いたときには驚いたもんだ」
なんて言葉を漏らし始める。
「そうだねぇ、まさかそうなってるとは…あたしもびっくりしたよ」
大尉さんもそう言って微妙な表情を浮べてコクコクと頷いた。と、それを聞くや
「あれはなぁ…最初に見たときはもう、怖かったし痛かったしでもう…」
なんて言って、十六号さんが身震いを始める。
「へぇ?こっちじゃぁ、割と有名な話だったけどね」
金獅子さんは、逆に三人の反応が不思議なようで、首を傾げながら言う。
「私は知らなかったですよ…」
そんな金獅子さんの言葉を聞いて、妖精さんはそう言って苦笑いを浮かべた。
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