855: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/16(月) 01:07:18.61 ID:1hRSULfgo
「はぁぁ…」
十六号さんが大きくため息をついた。
「まぁ、仕方ないよ。情報収集ってこういうものだし」
大尉さんが苦笑いで、十六号さんを励ます。
「ずいぶん歩いたもんね…」
妖精さんが弱々しい様子で言うと
「妖精ちゃん、宿に帰ったら脚ほぐしてあげるから頑張って」
と零号ちゃんがその背を両手で押す。
「………」
竜娘ちゃんも、さすがに疲れた表情をして、地面に視線を落としてトボトボと歩を進めている。
そんな竜娘ちゃんに、私はどんな声をかけて上げればいいのか、頭を巡らせていた。
あたりはもう夕方。傾いた夕日を背にした私達は、街外れの新興居住区を宿のある街の中心部へと歩いているところだった。
空は綺麗な夕焼けだけど、私達の心は疲れと落ち込みに沈んでいる。
結果的にいえば、竜娘ちゃんのお母さんは見つからなかった。
ううん、最初から今日中に見つかるだなんて思ってもいない。
だけど、少しは近づけるに違いない、って思いもあった。
それだけに、今日の聞き込みは、ある意味で私達にとっては失敗だった。
栗色の髪に碧の目をした二十代半ばくらいで、六年前の風の月にこの街にやってきた女性を知らないか?
そんな問いに返って来たのは、私達が想像していた以上のものだった。
「あぁ、それなら布を扱ってる商人の手伝いがそうだろう」
「ん?確か、旅亭の給仕係にそんなのがいたな」
「ふむ、そいつはきっと大工のとこのやつだろう」
「おお、知ってるぞ。酒場で料理人やってるのがそうだ」
「うーむ、そうさな…その頃合いだと、雑貨屋の嫁か、あとはパン屋の若女将だな。あぁ、仕立て屋の針子もそのくらいの時期だったと思うが」
「髪は栗色って言うか茶色だけど、あの自警団にいる女剣士がそうじゃないかね」
「それは土産屋の手伝いに違いないよ。戦争で子供と生き別れになったって話を聞いたことがあるからね」
「木炭売りのことか?何か用事でもあるのか?」
思い出しただけでも、そんな具合いだ。
私達が話を聞いた人の多くは、皆誰かしら特徴に見合う人を知っていた。
そして、重なることもあったけど、多くの場合、別の人を指していた。
私達が話を聴けば聴くほど、新しい人の話が飛び出してきた。
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