858: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/16(月) 01:10:18.64 ID:1hRSULfgo
「よし、それじゃ、さっさと戻って夕飯食べながら作戦会議だな」
十六号さんも笑顔を取り戻してそう言う。
「名簿と地図を照らして、効率よく回れる道順を考えるですよ!」
妖精さんがそう言って両の拳をギュッと胸の前で握った。
二人と同じように、私もヘトヘトの体の奥底からジワリと力が戻ってくるような感覚を覚えていた。
そんなことを話していたら、もうすぐそこに中心街が見えてくるころだった。
夕方ということもあって、仕事帰りの人達や買い物帰りの人達らしい人混みが、私達が背を向けている振興居住区の方へと足早に歩いている。
私達がいたのはちょうど中心街と振興居住区との境目のあたりで、道の両脇には個人がやっている商店なんかが軒を連ねている。
どのお店も表戸を閉じる準備に忙しそうだ。
「ん、なんかいい匂いしないか?」
不意に十六号さんがそう言った。
「ほんとだ!練り干とは違うにおいだけど…あ!あそこじゃない?」
それに続いて、零号ちゃんが声をあげ、道端の一軒のお店を指さした。
そのお店は一見するとお肉屋さんのようだけど、その店の中で何かを炭火で焼いている。
二人だけじゃなく、私の疲れた体と空っぽのお腹もくすぐる香ばしいにおいは、どうもあの炭火焼きが原因のようだ。
「あぁ、ヤキトリだね」
「ヤキトリ?鳥なんだ?」
大尉さんの言葉に、十六号さんがそう聞き返す。
「うん。なんていうのかな…鶏肉の串焼き、みたいな感じの食べ物だよ」
「へぇ!零号、晩飯のオカズにちょっと買っていこう!」
「うんうん!行く!」
十六号さんと零号ちゃんはそう言うが早いか、パッと店先へ駆け出した。
そんな後姿を見て、大尉さんがあははと声をあげる。
「まったく、ちょっと頼もしいと思ったらこれだもんね」
「でも、おかげで元気出たですよ」
大尉さんと妖精さんがそう言いあって笑っている。
私達も道の真ん中で待つのも邪魔になるので二人のあとを追う。
店の中に入ると、炭火で鶏肉を焼いているおばさんに、十六号さんと零号ちゃんが何かを話しかけているところだった。
「これって、このまま食べるの?」
「もう少し焼けたら、こっちのタレにつけてまた焼くんだよ。あとはそのままでもいいし、香辛料なんかを掛けるのもうまいよ!」
「ねえ、これいろんな形あるけど、違うもの?」
「あぁ、そうさ!こっちは胸肉、こっちは皮、そっちの串はワタだよ。鶏は捨てるところがないんだからね!」
おばさんは二人にそう説明しながら、串を炭火からあげるとタレの入ったツボに漬け、すぐさまその串を炭火へと戻す。
ジュワッと言う音とともに、香ばしいにおいが一層強く放たれた。
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