861: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/16(月) 01:12:49.68 ID:1hRSULfgo
「りゅ、竜娘ちゃん…?」
私は、小声でそう呼びかけてみるけれど、まったく反応がない。
竜娘ちゃんは、ただただ身を強張らせて、おばさんと話し込んでいる女性の後ろ姿を見つめ続けている。
「ね、ねぁ、ちょっといい?」
そんな竜娘ちゃんの様子に気が付いたのか、大尉さんが女性にそう声を掛けた。
「ん、あ、はい?なんでしょう?」
「あの…えぇっと…あなた、六年前の風の月に黒服の人達にこの街に連れてこられた、とか、そんなことあったりする?」
「えっ…?」
その反応は、劇的だった。
大尉さんの質問に、彼女はさっと半歩引いて半身に身構えた。
返答を聞くまでもなく、明らかに動揺している様子だ。
「…だったら、なんだというのです…?」
彼女は、鋭い視線を大尉さんに投げつけながらそう聞き返す。
「あ、えぇと…警戒しないで。別にまた連れ去ろうとかそういうことを考えてるわけじゃなくって…」
大尉さんが彼女の様子にそう口ごもった。
大尉さんは見るからに困っている。
いや、驚いていると言った方が合っているのかもしれない。
それもそうだ。私だって、彼女の反応をいまだに信じられずにいる。
こんなことって、あるの…?
本当に六年前の風の月に、特務隊にこの街に連れてこられたの…?
もし、もし黒服って言うのが人違いじゃなければ、この人が、もしかして…本当に…?
こんな、お肉屋さんの炭火焼きの前で…見つかっちゃうものなの…?
「あなた、何者ですか…?」
彼女は、鋭い視線で大尉さんを睨み付けながら、さらにそう言葉を継ぐ。
大尉さんは、口をパクパクとさせながら、やがて私に助けを求めるような視線を投げかけてきた。
い、いや、大尉さん…えと、気持ちは分かるけど、その、竜娘ちゃんも固まっちゃってるし、えっと、確認できないんだけど、
二人の反応を見ればきっとそうなんだろうって思うんだけど、でも、魔界のこととかあんまり話したら良くないだろうし、
だけど竜娘ちゃんが持ち直してくれないと確認取れないけど栗色の髪の女性はすぐにでも刃物を取り出して大尉さんに切りかかりそうな勢いだし
えええええっと、どどどどど、どうしよう…!?
大尉さんのせいで、私まで頭の中に真っ白になって、そんな言葉しか浮かんでこない。
でもそんなとき、ふわりと日除けのマントを翻らせて、大尉さんと女性の間に割り込む少女が一人。
誰あろう、零号ちゃんだった。
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