863: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/16(月) 01:14:56.63 ID:1hRSULfgo
「竜娘…あなたなのね…?そう、なのね…?」
「はい…はいっ…!お母さま…お母さま…!ずっと…ずっとずっと、会いたかった…!」
震える声のお母さんに、竜娘ちゃんはもう半分以上泣き声になりながら言い、ギュッと抱き着いた。
そして、いつもの竜娘ちゃんらしくなく、まるでお母さんに甘える子どもみたいに、勢いよくしゃくり上げ泣き出す。
ギュッと、胸が掴まれるような、そんな感覚だった。
辛い思いや切ないことでこんな感覚になることはあったけれど、嬉しくて、本当に良かったと思ってこれを感じるだなんて、想像もしていなかった。
これまでの竜娘ちゃんが、どんなことを思って過ごしてきたのか。
お母さんへの思いを抱えて、何を感じて表に出さずにいたのか。
そんなことがいっぺんに伝わってきて、私はいつのまにかポロポロと涙をこぼしていた。
不意に、横からドン、と何かが飛びついてくる。
見ると、零号ちゃんが私に抱き着いて来ていた。
零号ちゃんは私の胸に顔をうずめながら
「良かった…器の姫様、良かったよぉ…」
とグズグズと鼻水をすすりながらつぶやいている。
私もおんなじ気持ちだった。
私もすぐに零号ちゃんの体をしっかりと抱きしめると、お姉さんと同じフワフワの黒髪に頬をうずめて
「うん、良かった…本当に良かった…」
と胸にこみ上げていた思いを口にしていた。
竜娘ちゃん、本当によかったね…ずっとずっと、会いたかったんだよね…
もう大丈夫だよ。もうきっと離れ離れになんてならない。
二人そろって、お姉さんの待っているあの街に帰ろう。
そこで、今までできなかった分、いっぱい甘えて、いっぱい愛してもらっていいんだからね。
もう我慢なんてしてなくっていいんだよ。
私は、零号ちゃんと抱き合って泣きながら、心の中でそんなことを思っていた。
「ねぇ、ちょっとセンパァイ?誰か泣いてるみたいだけど、大丈夫?」
ふと、竜娘ちゃんの泣き声の合間に、そんな声が聞こえてきた。
「グス…ごめん、後輩ちゃん…あのね…!」
竜娘ちゃんのお母さんはそう言って顔をあげる。
そして、店の中に入って来た一人の女性を見やって言った。
「私の娘が、会いに来てくれたの…!私を探して、こんな、こんな遠いところまで…!」
「へぇ、前に話してた生き別れの娘、っていう…?」
「うん…!」
そんな言葉を交わして、お母さんに抱き着いて顔が見えない竜娘ちゃんをしげしげと見つめる後輩さんを、
私は、ううん、私達は、固まった状態でただただ見つめていた。
本当に、息をするのも忘れて、ただ見つめていた。
まるで理解ができなかった…
だって…
だって……
だって………
私達はその“後輩ちゃん”の顔を知っていた。
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