過去ログ - 幼女とトロール
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883: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/23(月) 22:38:16.97 ID:g/PD0yL+o

 竜族将さんは、あの戦いのあとしばらくの間は西大陸全土からの物資輸送を行ってくれていた。

半年ほどしてこの辺りの情勢が落ち着いた頃には、この中央都市へ大勢の兵隊さん達を引き連れて戻って来てくれた。

竜族将さんは執政官として、兵隊さん達は親衛隊と防衛隊とに分けられこの街の治安部隊として活躍してくれている。

 そんな竜族将さんは私達が竜娘ちゃんのお母さんを探す旅に出る少し前に、

元サキュバス族だった人達が中心となって治める西部大陸のさらに西側の土の民の氏族領へと、交易と物資交換の協議のために赴いていたはずだ。

「あの石頭、とりあえず最低限で良いって言ったのに、ずいぶんと押しちまったらしくて話自体が破断しかけたらしい。

 側近が慌てて早馬を駆けさせて来たんで、サキュバスと、それから護衛にトロールと防衛隊小隊を一隊付けて向かわせたんだ」

お姉さんはそう言ってため息を吐きつつ続ける。

「その翌日に、中央高地東側の湖の貴族領から救援要請が来た。南の森の貴族が、兵を率いて領境まで進軍してきてる、ってな」

「戦争しようってのか…?」

十六号さんがお姉さんにそう聞く。お姉さんは、肩を竦めて

「どうだろうな…とにかくそれを聞いて、残ってた弓師を指揮官、女騎士を参謀に就けて、防衛隊から一個中隊選抜した連中と一緒に停戦監視団として向かわせた。

 報告じゃぁ、まだ衝突は起こってないようだけど。どうも武力をチラつかせて、高地の新領地を割譲させようとしてるらしい。

 今はたぶん、弓師が間に入って講話交渉中だろう」

と教えてくれた。なるほど、それで、か…

「残ってる執政官は兵長に元機械族の族長と魔道士にあたしだけだ。

 機械族の族長は防衛隊指揮を任せてるし、魔道士は後進と新人育成で掛かりきりだから、実質内務はあたしと兵長だけでなんとか回してる。

 大尉のやつにも手伝ってもらいたいところだけど…帰ってすぐだし、あいつを見張っておく役回りに一人割いておくべきかなと思ってるところだ」

そっか…私はようやく理解した。そもそも巡検隊が大陸各地に散らばっているから、ここの執政官は基本的にそう多くはなかった。

少ない人数だったから、それぞれ適当な人数の補佐官を立てて仕事をこなしていたんだけど、どうやらそれが回らなくなってしまったようだ。

 サキュバスさんがいない分、姫ちゃんの世話はお姉さん一人でやらないと行けないし、残った補佐官達をなんとか使いながら政務もこなさなきゃいけない。

 そんなんじゃ、寝る時間なんて取れなくっても仕方ないかも知れない。お姉さんの寝不足の理由がようやくわかった。

「もっとこう、効率の良いように補佐官やら政務官を増やしても良いんだけど、そういう人を探すにも時間掛かりそうだしな…

 今は現状できることやってるだけで手一杯なんだ…」

お姉さんはそう言ってまた、深いため息を吐いた。

その表情からは苦悩と披露が見て取れる。

「お姉ちゃん、姫ちゃんは私達が見てるから、少し眠ってよ」

零号ちゃんがお姉さんの膝の上でお姉さんを見上げて言う。そんな零号ちゃんに、お姉さんはなんとか笑顔を見せて

「あぁ、うん。ありがとな」

と礼を返してその頭をくしゃくしゃと撫でた。でもそれからすぐに

「だけど、あんた達も帰ったばかりで疲れてるだろ?あたしは大丈夫だから、少し休め」

と零号ちゃんの腕から姫ちゃんを抱き上げて赤ちゃん用のベッドの中にそっと寝かせ直した。
 


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