913: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/11/30(月) 01:11:20.67 ID:j0JuHi67o
「んじゃぁ、おやすみ」
そういうと勇者様は、のそりのそりとお姉さんのベッドに体を横たえて、毛布をかぶり目を閉じた。
そんな勇者様の顔は、どこかやつれて見える。
「こんな顔してたらお姉さんが―――
ふと、そう言いかけた言葉が頭を巡って、私はハッとして、息が詰まった。
「ん…何?顔が…どうしたって…?」
まどろみながらのおっとりした声で、勇者様がそう聞いてくる。
「…え、と、こんな顔してたら、お姉さん怒りそうかな、って。自分でやるって言ったんだから、しっかりやれよ、とか言って」
私がとっさにそう言い訳をすると、勇者様は目を閉じたまま眉間に皺を寄せ
「…それは、怖い…なぁ…」
なんて、小さな小さな、掻き消えそうなくらいの声で口にしたっきり、すーすーと穏やかな寝息を立て始めてしまった。
わ、悪いことしちゃったな…困った顔しながら寝ちゃったよ…こ、怖い夢でも見ないといいけど…
私はそんなことを思いながらベッドに腰かけ勇者様に毛布を掛けなおす。
勇者様はどうやらすっかり寝入ってくれたようだ。
それを確かめて、私は姫ちゃんの眠るベッドの柵に体を預けて、のぞき込むようにして同じように眠る姫ちゃんを見つめる。
血のつながった、家族、か…
竜娘ちゃんのときにもそうだったけれど私はふと、死んだ両親のことを思い出していた。
そりゃぁ、そうだよね。
お姉さんが怒るのも、無理はない。
私だって、そう思ったくらいだ。
お姉さんが思わないはずがない。
―――随分と血色がいいじゃないかよ、えぇ?どこをふらついてると思ったら、まさか観光地で大工とはな
あれはつまり、そういう意味だったんだね、お姉さん。
私は心の中でお姉さんにそう聞いてみた。
もちろん、答えてくれるはずもないんだけど、私の脳裏に映るお姉さんは、少しあきれたような表情で、私に笑いかけてくれたような、そんな気がした。
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