939: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 00:47:08.47 ID:jGgpJsLto
思わぬ質問に私は
「えっ?お、覚えてるけど…」
と意図を汲み取れずに戸惑う。でも、お姉さんはそんな私を落ち着かせるように、的確な指示をくれた。
「姫のベッドを壊していいから、あれで火種を作ってバルコニーで毛布でも何でも燃やしてくれ。火と煙で外の防衛隊の連中に知らせる」
「わ、分かった!」
私はお姉さんにそう返事をする。
次いで、お姉さんは十七号くんと剣士さん達に
「…との障壁、こんな程度じゃ破られるな。剣士、十七号。あっちのソファーと、テーブルもだ。
零号も手伝ってくれ。とにかく積んで時間を稼ぐほかにない」
と指示を飛ばす。十七号くんに剣士さん、親衛隊員さんに零号ちゃんがお姉さんにうなずいて返した。
そして、それを確かめたお姉さんは最後に勇者様をまっすぐに見つめて言った。
「それから姉ちゃん。姫を頼む。あいつは、あたしとサキュバスの宝物だ」
勇者様は、お姉さんのそんな言葉に微かにも動揺せず、同じようにお姉さんをまっすぐ見つめ返し
「分かった」
とただの一言言って頷いた。
「うおおぉぉぉぉ!」
突然に、廊下の方からけたたましい雄叫びが聞こえ出す。盗賊団だ…こ、ここへ来るつもり…!?
「急げ!」
それに気付いたお姉さんが、私を見やって叫ぶ。
「うん!」
私は返事をするや、勇者様と赤ちゃん用のベッドに駆け出して、勇者様は姫ちゃんを毛布で包んで抱きかかえる。
私は木で出来た柵を思い切り蹴飛ばして壊し、二本の木の棒と、それから姫ちゃんが使っていた羽根の布団握りしめてバルコニーへと飛び出した。
お姉さんたちはソファーやテーブルを閉じたドアの前に折り重ねて障壁を作っている。
危険から身を守ろうと思えば、戦うよりも確実な方法だ。
私はそんな様子を視界に収めながらバルコニーで持ってきた木の手すりのように平たくなった方を下に置き、
丸い形をした支柱の方をその上に立ててゴリゴリと桐もみするように擦り始めた。
この方法は、火種を作るには時間が掛かる…半刻とは言わない…せめて、四半刻あれば、なんとかなる…!
私はそう考えながら、ひたすらに木を擦り続ける。
そうしている間にドアの外には盗賊団到達したの、ドンドン激しくドアを叩く凶悪な音が室内に響き始めた。
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