944: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 20:55:56.35 ID:jGgpJsLto
「…な、なるほど…覇気だけは、確かに並じゃねえな…」
そう言った男はスラリと腰の剣を引き抜き、そして叫んだ。
「掛かれ!」
途端に部屋の中にいた盗賊団だ一斉にお姉さん達に斬り掛かった。
お姉さんは一太刀目を剣の腹で滑らせて往なし、ガチャっと刃立ててその男を一薙切り捨てる。
次いで二人同時に振り下ろされた剣をマントを翻して躱すと、一人を蹴りつけ、そしてもう一人肩を切っ先で突く。
さらに背後から斬り掛かった男の剣を、素早く引き抜いた鞘の装飾の部分で受け止めると、足元から斬り上げた。
男は脚の付け根から肩へと袈裟がけ斬られて床へと昏倒する。
十七号くんも負けてはいなかった。襲いかかって来る盗賊団剣を躱しては斬りつけ、受け止めては体術で吹き飛ばし、
その隙を付いてきた別の男の剣を素早い動きで振り上げた剣受け止め、腰に下げていたダガーをその胸に突き立てる。
そんな十七号くん死角から、先ほどお姉さん蹴飛ばされた男が短剣を握って十七号くんへと突撃する。
それにいち早く気づいたお姉さんが剣を伸ばして男の足元を引っ掛けた。
「おい、頼むぞ!」
お姉さんがそう言うやいなや、十七号くんは
「分かってる!」
と言いながらお姉さんに向かって剣を横薙振った。
それをしゃがんで躱したお姉さんの背後で、お姉さんの隙を狙っていた別の男が十七号くん剣胸に突き立てらて、床にドッと倒れ込む。
そんな二人が床を転げると同時に、鳥の剣士さんと士長さんが盗賊団に斬りかかった。
剣士さんは二本の細身の剣を振るい、まるで踊るような足さばきで軽やかに盗賊団を剣の刃で次々と撫でつけていく。
士長さんも十七号くんに勝るとも劣らない鋭い剣さばきで、盗賊達を入口にくぎ付けにしている。
正直、想像以上だった。
四人ともすごい…お姉さんは二年も剣をちゃんとやってない様には見えないし、十七号くんもけっしてただ見習い隊員には思えない。
鳥の剣士さんも士長さんも、盗賊団相手に一歩だって引けを取っていない。
これなら…大丈夫…!私はそう信じて、擦っていた基の板に目を向ける。そこには赤々と輝く火種が完成してた。
私は傍らに置いておいた布団を引っ張ってきてダガーでそれを破り、中から出てきた羽毛一握り引っ掴んで出し、種火上にそっと盛って静かに息を吹きかける。
チリチリと音がし始めて、やがて火種は大きくなり、私が盛った羽毛を包み込む炎上がった。
私はその火種を破った口突っ込んで、今度はさっきよりも少し強く息を吹き込む。
再びチリチリと音がして、布団の外布が焦げ付き破れて、布団の外に微かな炎が目を出した。
私はさらにタッと部屋を駆け、壊れた姫ちゃんのベッドの柵の残りを持って戻ると、
火の点っている布団の中に何本かを突っ込んでもう何度か息を吹き込む。
すると最初は微かだった煙が徐々に多くなり、布団の中で柵の木にも火が灯った。
私はそれをバルコニーギリギリのところまで引っ張り出して、柵の残りの全てを火の中に焚べ、さらに息を吹き込む。
布団からはみるみる炎と煙が上がり出した。
よし、できた…!これならきっと、街の人や防衛隊が気づいてくれる…あとは少しでも長くここを持ちこたえれば…
そう思って私が顔をあげた時だった。
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