949: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 20:58:50.57 ID:jGgpJsLto
「お前、同族に“首狩り”なんて呼ばれてたのかよ」
「こんなのと同族だなんて言うもんじゃないよ」
隊長さんの言葉に金獅子さんはそう言い返しながら、背負っていた大きな斧を軽々と一振りして
首から下げていた警笛をけたたましく吹き鳴らした。
次の瞬間、部屋の窓という窓がガシャンと割れて、防衛隊や親衛隊の軽鎧を着込んだ人達が十数人、部屋の中へと踏み込んできた。
廊下の方からは
「長槍隊、前へ!手向かう者には容赦するな!」
という三班の班長さんの声が聞こえる。
それを確かめた金獅子さんは、ユラリとその大斧を構えて
「さて、見ての通り包囲させてもらった。今からでも黄泉の国へ行きたいってやつがいるんなら前にでなよ?」
と、軽い足取りで盗賊達詰め寄る。
十七号くんと零号ちゃんに押されていた盗賊達は、金獅子さんの出現で完全に戦意を喪失したのか、
部屋の隅にまるで風の魔法で押し付けられているように一塊になっていた。
「ふふふ…いい表情じゃないか…片っ端から首を刎ねてやりたくなるよ…!」
そんな盗賊達の様子に、金獅子さんが綺麗な顔をまるでこの世のものとは思えない程の恐ろしい笑みに変えて言う。
「…お、おぉぅ…」
その顔を見て、十七号くんがそう声を漏らして後ずさりする。
反対に、零号ちゃんはまるで何かとてつもなく神々しい物を見つめるような視線で
「……かっこ…いい…」
と打ち震えていた。
不意に廊下からドカドカとけたたましい足音が聞こえて来て、班長さんを先頭に防衛隊と親衛隊の人達が一挙に押し込んできた。
班長さんが部屋の中を素早く確認すると、
「全員取り押さえろ。ケガ人と遺体はすぐに運び出せ」
と隊員に指示を出す。
部屋を覆い尽くすんじゃないかって程の数で踏み込んで来た隊員さん達に剣や槍を突きつけられた盗賊達は遂に各々武器を床に投げ捨てて降伏の意思を見せた。
それを確保した班長さんはお姉さん達の方へと駆けて行き、その前に跪く。
「議長様…ご無事で…」
俯いたまま班長さんのその声からは、苦しみが感じ取れた。
「うん、まぁ、なんとか…」
お姉さんは、班長さんに穏やかな声色でそう声を掛けて上げている。でも、班長さんはなおも締め上げられているかのような声で
「…この度は…面目次第もございません…」
と絞り出すように言った。
「気にするな…元はと言えば、火事騒ぎで浮足立ったあたしの責任だ」
お姉さんは、そう言い、それから
「下を守っていた連中の被害は…?」
と、本部の警護に付いていた人達の事を尋ねる。班長さんは、それを聞くなり口惜しそうに表情を歪めて
「確認出来た二十二名は死亡。他の者はまだ未確認です」
と報告した。
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