951: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 20:59:57.68 ID:jGgpJsLto
「しかし…普段あれだけ泣きまくってるのに、あの騒ぎの中を熟睡って、あんた一体どういう神経してんだよ…?」
お姉さんが片腕で抱いた姫ちゃんを覗き込んでそんなことを漏らしている。
「ホントだよな。俺、姫が泣いたら目を付けられると思って気が気じゃなかったよ」
十七号くんがお姉さんに同意すると
「姫ちゃんはきっと、大きくなったらすごい大人になるですよ」
なんて妖精さんが疲れた顔に笑顔を浮かべて言った。
私達は親衛隊さん達に運び込まれるように、本部の最上階にある、普段は会議室として使っている部屋へと移動してきていた。
剣士さんと士長さんは、別の部屋へと運ばれたらしい。
士長さんのケガが心配だったけれど、医務官さんの話では命に関わる可能性は低いってことだった。
部屋に着した私達は心配そうな表情をした侍女さん達に出迎えられた。
軽食や水、もちろん手当て道具なんかも一式揃っていて、十六号さんはまさに今、衝立の向こうで手当てを受けている。
「んぐっ…あうぅっ…痛っ…ダメだ、死ぬっ!死ぬぅぅ!」
手当てを受けている…んだけど…本当に死んだりしないよね…?私は十六号さんのことが心配になって、衝立の向こうをチラッと覗き見る。
そこでは、十六号さんが侍女さん達数人掛かりで小さなベッドにうつ伏せに押さえつけられ、
消毒ためのに匂いを嗅ぐだけでクラクラ来ちゃいそうな強いお酒を染み込ませた丸めた綿を傷口に押し付けられて悶絶している姿があった。
「最後の力を使って上げたほうが良いかな…」
私の背中にへばりつくようにして十六号さんを覗き込んだ零号ちゃんが青い顔をしてそう言う。
「でも、白玉石、お姉さんに取り上げられちゃったでしょ」
私が言ったら零号ちゃんは
「返してって頼んでみる…?」
と私に意見を求めて来る。私はもう一度苦しむ十六号さん見やって逡巡してから
「あんなちょっとで回復魔法とか出来る…?」
と零号ちゃんに聞き返してみる。すると零号ちゃんも難しそうな顔で
「節約すれば…出来る、かも…?ダメそうなら、睡眠の魔法とかでも…」
とひとりごとのように言って私と見つめ合い、それから二人してお姉さんに視線を向ける。
「ダメだからな」
そんな私達の会話に気付いていたのか、お姉さんはジト目でこちらを見つめてそう言ってきた。
私が零号ちゃんに渡した白玉石は、本当にもう、小指の爪程の小石になってしまっていて、
さすがにどんな魔法もほんの申し訳程度にしか使えないだろう魔力しか残っていないようだった。
お姉さんはこの部屋に着くや否や、私と零号ちゃんを問い詰め、白玉石のことを白状させるとすぐにそれを取り上げた。
「十六号。あんたこれに懲りて少しは自分を守るクセを付けろよな」
お姉さんが衝立の向こうへとそう声を掛ける。
お姉さんの言いたいことは、まぁ、分からないではない。十六号さんはいつだって誰かを庇ってケガをする。
それこそ魔法が使えた頃なんかは、十八号ちゃんの回復魔法頼みで自分を守る結界魔法を後回しにしていたところがあったし、
私もたびたび心配させられた。
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