957: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 21:08:19.39 ID:jGgpJsLto
「そっか…あいつがな…」
「まぁ、仕方ねえさ」
「それで、盗賊どもは?」
「議長サマの言いつけ通り、中央高地の開拓に送ってやったよ」
隅の方で話し込んでいるのは隊長さん達だ。ここはまだ、それほど賑やかってわけでもない。それもそうだろう。
盗賊団が本部に侵入してきたときに階下を警備してくれていた防衛隊の中に、隊長さん達諜報部隊にいた頃からの仲間が一人いた。
私も良く知った人で、妖精さんが言っていた班長補佐官さんの一人だ。
彼は、体中を斬りつけられながらも壮絶に戦った痕跡を残して亡くなっていた。
彼を弔うとき、お姉さんが涙を流しながら謝罪とお礼を言っていた姿はまだ私の脳裏にはっきりと焼き付いている。
「ふぅ、久しぶりだな、こう言うのは」
「兵長ちゃんはいっつも気合入りすぎなんだよ。楽に行こうよ楽に」
「お前は常に力抜けすぎなんだよ、大尉」
「ま、それが大尉さんのイイトコだとは思うけどね」
「そういうな。硬いところも兵長の長所だろう」
「ちょちょ、黒豹さんってば…!」
私のすぐそばでは、魔道士さんに兵長さん黒豹さんと、最近はすっかり大人の仲間入りをして立派に仕事をこなしている十四号さんがそんな話をしている。
そう言えば兵長さんと黒豹さんの仲は実はほとんど進んでいない。お姉さんはその話になるたびに
「早くやっちゃえばいいに、じれったい」
と冷やかしては真っ赤な顔をした兵長さんに怒られている。
やっちゃえば、って何をやるのかは知らないけど…結婚ってことだよね?
違わないよね?
「ぷはっ。やっぱり、この酒が一番旨い」
不意に、一緒に食事をしていたトロールさんがそんな事を言って空になったジョッキをテーブルに置いた。
そこにすかさず、妖精さんがお代わりを注ぐ。
トロールさんのお礼を聞きながら瓶をテーブルに置いた妖精さんが
「でも、さっき人間ちゃんが言ってたこと、私もちょっと気になってたよ」
「あぁ、確かに、様子は変だった」
と言って、ついさっきまで、二人と話していたことに話題が戻る。
「やっぱり、そう思う?」
「うん、元気ない気がする」
「今も、冴えない顔だ」
私の問いかけに、二人はそう答えて、揃ってお姉さん達の方へと視線を投げる。
その先には、お姉さんとサキュバスさん、勇者様からほんの数歩離れたところにあるベッドで眠っている姫ちゃんの様子を見ていた零号ちゃんの姿があった。
零号ちゃんはどこか所在なげな雰囲気で、みんなの和の中にいるのに、遠巻きにみんな見つめているような、そんな感じがする。
零号ちゃんの様子がおかしいことに気が付いたのは、盗賊団の事件があってから少しした頃だった。きっかけは十六号さんが
「そう言えば、零号見なかったか?」
なんて私に声を掛けて来て、そう言えばここのところ一人でいることが多いな、と思ったことからだった。
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