過去ログ - 劇場版アイマスで水瀬家に宿泊した志保のお話 抄
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[sage]
2014/10/12(日) 12:00:24.50 ID:NHNSY0P+o
「はぁ……はぁ……」
寝ぼけ眼で見た夢か何かだと思いたかったのだけれど、伊織さんがどいてくれて開けた視界のすみにはしっかりと先ほどまで用意がなかった水差しが鎮座していた。
「完全に見られちゃったじゃないですか……。ここ、私の部屋だって、メイドさんも知ってるでしょうし……」
あまりの恥ずかしさに手の甲で視界を覆ってしまう。
「メイドの顔は見ていないでしょ?」
「見れるわけないじゃないですか……」
声の感じから小柄ではない女性であることは知り得たけど、人相もわからなければ髪型も分からない。
「なら、誰にも知られていないのと一緒よ。アンタは向こうの顔を知らない。向こうはなにも見ていない」
そういう問題じゃないです、と唇をとがらせたときにはもう、伊織さんはこの話題を打ち切ってしまっていた。
「まったく、未成年の客室だってこと忘れてるんじゃないの? ロックをたしなむわけでもないのに……」
トングで中を探っていた伊織さんは、四、五センチほどの直径の氷を選び出して布巾にくるみ、こちらに手渡してきた。
「すこし腫れてるわ。これで冷やしときなさい。朝になってから直すよりかは目立たないわ」
「………はい」
言われたとおりの場所に布巾をあてがう。確かに腫れぼったくなっているようで、冷気で血管が収縮するのが心地よい。
「って、違うわよ。唇じゃなくて、目の周り!」
「え?」
言われてそちらの方に氷を当ててみると、指先で触れて実感できる程度にむくんでしまっていた。
夜泣きしたことを伊織さん以外に知られるのは恥ずかしいので、言われたとおりに片目に当てておく。氷が溶けてきたら逆側も冷やそう。
「声、かすれてるわ。水も飲んでおきなさい。……起きれる?」
先ほど伊織さんに押し倒されてから、ずっと仰向けに寝転んだままなのを心配してくれているようだ。腹筋を使って一息に起き上がれるほどの体力はまだ戻っていなかったので、身体の脇を下にするように向きを変えて、もぞもぞと身体を起こすことにする。ローテンションのときの杏奈のようだ。
片手片肘を支えに身体を起こそうとしたとき、こちらを見つめる伊織さんの背後にミネラルウオーターの入ったコップを見つけて、イタズラをひとつ思いついてしまった。
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