461:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/10/20(月) 00:05:04.38 ID:A6SsHlSs0
あっれいつの間にか流れ変わってんじゃん
でももったいないから晒すぜ!
寂れた酒場だった。客もいない店内には従業員の姿もない。カウンターでは、店主の男が手慰みにグラスを磨いている。
よう、と老人が声をかけると、店主はだるそうにため息を吐いて、やっと手を止めた。
「お客さん、今日はもう店じまいなんで……」
店主はぽかんと口を開けて老人を見つめた。驚いた表情も仕草も、あの時とまるで変わっていなかった。
「おまえと会うのも何年ぶりかな」
「――いまさら何しに来やがった、老いぼれ。この街にはもうおまえの居場所はねえぞ。戦争はもう終わったんだ」
「いいや、俺達の戦争はまだ終わっちゃいない。30年前の戦争は今でも続いてんだよ、姿も形も変えないままな。だからおまえもここにいるんだろ?」
あと、と老人は、うるさがるようにそっぽを向いた店主に指を突きつけた。
「他人様つかまえて老いぼれはねえだろう、糞爺。おまえ、俺と5つもトシ変わんねえだろうが」
鼻を鳴らした店主が酒瓶とグラスを引き出す音を聞きながら、老人は手近なテーブルに着いた。同時に飛んできたものを、歳に見合わない機敏な動きで掴む。
掌を開く。――紙包みのチョコレート。
「……覚えていやがったか」
老人はかすかに笑う。別れ際、うつむく友に投げて寄越したチョコレートが、こうして帰ってくるとは。
包みを開ければ、甘い香りが鼻をついた。親指と人差指でつまむ。口を開けて舌に乗せる。歯が溶けるような強烈な甘さも、あの時と何も変わらない。
数多の死を血肉となし、生と死の狭間でワルツを踊る狂乱の時代は過ぎ去った。戦争は終わった。唯一の世界、真なる平和が30年前にもたらされたのだ。
だからこそ、老人はここに帰ってきた。
黄金郷と呼ばれた王国、栄華を極め、今や滅びて見る影もない都で、老人は復讐を誓った。
ハードボイルドってこんなん?
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