191:名無しNIPPER[saga]
2016/02/25(木) 23:20:13.51 ID:ZfHVyDZr0
海未「……ふふ、我ながら酷い出来ですね」
私は筆を置いて、小さく息を吐く。
看護師「園田さん。体の調子はどうですか」
既に見慣れてしまった看護師さんに軽く会釈して、私は机に広げていたノートを閉じる。
看護師「あら、何を書いてたの?」
海未「それは、その……」
気恥ずかしくて視線を逸らしてると、
看護師「えいっ」
海未「あぁ!」
隙を付かれてノートを奪われてしまいました……。
ノートを開いた看護師さんが、そこに掛かれていた文章に目を通す。
看護師「へぇ〜、小説なんて書いてたんだ」
海未「うぅ……そ、そんな、小説なんて呼べる物ではありません」
看護師「ふふ、確かにちょっと酷い出来ね」
海未「そんなハッキリ言わなくても……」
看護師「冗談。とても素敵な想いが籠ってるわね」
照れた顔を隠す様に、私は下を向く。
看護師「この……作中に出てくる人達は皆知り合いなの?特にこの豆腐男とか、鉄生?とか言う人は」
海未「いえ、その人達はこの病院で読んだ絵本に出てくるキャラクターなんです。病院の子供たちに読み聞かせていると覚えちゃって」
看護師「海未ちゃんは子供たちに大人気だもんね〜。あ、じゃあこの穂乃果って子も?」
海未「いえ、彼女は私の本当の……友達、です」
看護師「……そう」
何か感づいたのか、看護師さんは一瞬切なそうな表情を浮かべるも、すぐに柔らかな微笑みを浮かべる。
看護師「じゃあ、早く元気にならないとね!穂乃果さんもきっと待ってるよ」
海未「……ふふ、そうですね」
私はふと窓の外を見る。今日は快晴で雲もほとんどない。
でも、青いはずの空は何処か淡泊で、まるで今の私の毎日の様。
入院してから、何日たっただろう。
今頃、皆は何をしているんだろう。
もしかしたら、私の夢物語の様な事をしているのでしょうか。
辛くなると思って病院の場所は伏せて欲しいとお母様にお願いしたのを少し後悔しつつ、私は手元に帰ってきたノートの側面をなぞる。
このノートをくれた太陽の様な少女の顔を思い浮かべる。
それだけで、私は今日も病気と闘う力を貰える気がした。
彼女が、彼女達が私の中にいる限り、私はあきらめない。
いつか帰る、その時まで。
END1 どんなときも、ずっと
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