過去ログ - 垣根「世界が悪意で溢れても」 -SS速報VIP

過去ログ - 垣根「世界が悪意で溢れても」

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1: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 19:56:17.70 ID:gjj2+jfsO
原作に近いパラレル世界です。ほぼ全編シリアス。

地の文あり。残酷な描写もちらほら。

垣根x心理定規の要素があると思います。
更新は不定期です。
書き溜めてますがすぐに尽きます。

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2: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 19:58:19.87 ID:gjj2+jfsO
　昔、正義のヒーローという存在に憧れたことがある。
　テレビか、漫画か。どこで知って、どう憧れたのかは覚えていない。

　誰かを必ず救う強さ。誰にも負けない強さ。
　そんなイメージに漠然と羨望の目を向けていた。

3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[Sage]
2014/10/13(月) 19:58:47.92 ID:bc1+Ec7F0
期待

4: ◆2BIJ5nUpEk[sage]
2014/10/13(月) 19:59:15.59 ID:gjj2+jfsO
　　断章　夢、情熱 / 箱舟の悪魔

　　1

　特例能力者多重調整技術研究所、通称『特力研』と呼ばれる施設が、学園都市には存在する。

5: ◆2BIJ5nUpEk[sage]
2014/10/13(月) 20:00:52.96 ID:gjj2+jfsO
　　2

　けたたましいサイレンで飛び起きた時には、清潔感溢れる白で埋め尽くされていたはずの視界は、真っ赤に染まっていた。
　平和が守られていたはずの箱舟は、突如何者かに襲撃されたのだ。

6: ◆2BIJ5nUpEk[sage]
2014/10/13(月) 20:02:33.30 ID:gjj2+jfsO
　いつもと風景の違う、幾度目かもわからない角を曲がったとき、ふと足元に違和感を感じた。同時に息切れを意識し、どっと肺が悲鳴をあげた。

　見ると、それは白く細い棒だった。本で見たことがある。子犬がよく口に咥えているものだ。
　さらに視界を巡らせると、近くには青い布があった。そのすぐ隣には、肌色と黒色と赤色でグチャグチャになっているボールが転がっていた。
　人はとある円周の中に三つの点がほぼ等間隔に存在していればそれをヒトの顔に見たててしまうというが、『それ』はまさしく『本物』の、

7: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:04:15.78 ID:gjj2+jfsO
　気持ち悪くて走れそうにない。大幅にダウンしたペースで、それでも理由もわからずどこかへひたすら移動を続けた。
　名前も知らない部屋に入った。そこには、巨大な機械がわんさかとあって。映画館のような巨大なディスプレイがあって。血管のように張り巡らされた無数の配線があって。
　そして。

「こちら──02。目標の施設を制圧しましたよ。……はい、私以外には、誰も」

8: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:06:51.95 ID:gjj2+jfsO
　　第一章　舞踏会 / 小さな一歩

　　1

　七月下旬。

9: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:07:56.79 ID:gjj2+jfsO
　こと才能に恵まれたと言われる学園都市における能力開発も、第二位という烙印を押されてから既に何年経ったか。
　レベル5という環境から、学校にはどこか適当な場所に籍だけ置いた状態で登校していない。今更行きたいとも思わないし、能力開発をしたところでこれ以上の成長は見込めない。

　垣根帝督は、やがて諦めることを覚えた。
　自分は特別じゃない。

10: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:08:59.72 ID:gjj2+jfsO
　ふと、歩を止める。周りのざわめきがなくなっていることに気付いたからだ。そして、いつの間にか家に帰るには随分と遠回りな道を歩いていたらしい。街灯の減った寂れた街の一角は、すぐそばにあるコンビニによってかろうじて明るさを保っていた。

　夜とはいえ夏は暑い。缶ジュースでも買うついでに少し涼もうかと、そのコンビニに足を向けたその時だった。

11: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:10:29.86 ID:gjj2+jfsO
「……あ？」

　ソプラノはそれきりで、実はただの幻聴なのではと本気で疑うほどだった。
　ひと気がなく光源の少ない路地裏。なるほど、確かに『不愉快なパーティ』が起きていてもおかしくないシチュエーションではあった。

12: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:11:28.30 ID:gjj2+jfsO
　　2

「っとぉ、声出しても意味ねぇって。現実見ようぜ、お嬢ちゃん？」

　男は下卑た表情を浮かべながら、脅かすように大声で言った。どうせこんな時間に人は来ない。彼の目の前では、ボロ布だけを身にまとった短髪で黒髪の少女がぺたりと座り込んでいた。

13: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:14:31.82 ID:gjj2+jfsO
　「ぐえぇっ」という情けない肉声が男の背後から聞こえ、彼の動きを制止させた。

「……？」

　男はゆっくりと振り返り。

14: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:16:57.93 ID:gjj2+jfsO
「……ひぃっ！？」

　我に返った男は、懐から出した拳銃を乱射した。照準が酷く乱れるが、そのうちの一発が運良く襲撃者の心臓ど真ん中へ向かって行った。

　やった。

15: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:19:44.65 ID:gjj2+jfsO
　男がそう言った時だった。
　低く抑えられた襲撃者の声が確かに聞こえた。

「よお、ゴミムシ」

16: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:23:46.34 ID:gjj2+jfsO
　残された少女は、救いの手に僅かに顔を上げ、質問を投げかけた。

「……あなたは？」

「……」

17: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:24:43.36 ID:gjj2+jfsO
　　2

　助けてもらっておいて図々しい奴だ。
　気紛れでたまたまゴミムシの処理をしただけ。
　これ以上この女と関わる必要はない。

18: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:26:23.96 ID:gjj2+jfsO
　　3

　第三学区には、個室サロンという施設が存在する。
　イメージ的には、カラオケボックスを豪華にしたような部屋を、指定した時間借りられるというサービスだ。
　内部に監視カメラといったものはなく、店員にも内部を覗かれることはない、大人の目の届かない空間。

19: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:30:39.35 ID:gjj2+jfsO
「IDカードか学生証を提示してもらえますか？」

　垣根帝督は、先程強姦未遂から救った少女を連れて、個室サロンに来ていた。単純に、完全下校時刻後に営業している店なんて地下街の居酒屋かコンビニかここぐらいだからだ。

　しかし、時刻は既に夜8時を過ぎている。そんな時にホストのような風貌の青年と、ボロ布だけを纏った少女が入店、ベッド付きの部屋に翌日正午までチェックインときた。

20: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:32:46.06 ID:gjj2+jfsO
　　4

　部屋に入り、まずボロ布の少女を風呂に入らせた。
　彼女は両手をきつく拘束されていたらしく力が入らないというので、互いにバスタオルを巻いて彼がシャワーを浴びせた。抵抗するかとも思ったが、ずっとおとなしかった。

21: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/10/13(月) 20:34:04.73 ID:gjj2+jfsO
「改めて、助けてくれてありがとう」

「話って？」

　垣根は必要最小限の言葉でどうでもよさそうに問う。

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