過去ログ - 水本ゆかり「恋の話、聞いてもらえませんか」
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11: ◆J6sXPQ/xjk[saga]
2014/10/19(日) 23:36:47.74 ID:0gxa3WZjo

「風が冷たいな。寒くないか?」

「はい、平気です」

 気遣いに礼を述べ、プロデューサーの半歩後ろに付いて歩き出します。寒いです、なんて答えていたなら、どうにかして温めてもらえたのでしょうか。もちろんそんな大胆なこと、言えるはずもありません。それに、身体は気恥ずかしさでぽかぽかとしているし、こちらを気にかけてくれることが嬉しくて、心もふわふわとしたもので覆われていますので。

 ただ一つ、指先だけが少し冷たくはありました。陽光に照らされた、プロデューサーの空いた左手が、とても気になってしまいます。

「正直、びっくりした、告白」

 いつもより狭い歩幅でゆっくり歩きながら、プロデューサーがそんなことを言いました。気持ちを伝えて終わった話だと思っていた私は、彼のほうからそれを切り出してくれたことにむしろ驚きました。涼やかな風に撫でられ落ち着きかけていた心臓が、またもとくとくと高鳴り始めます。

「なんたって俺、モテないからな」

「プロデューサー、格好良いと思いますけど」

「そんなこと言ってくれるの、ゆかりだけだ」

 苦笑を落とされてしまいました。でもそんな笑い方も、素敵です。

 にしても私だけ、なのでしょうか。だとしたら私は自分が、プロデューサーのことを格好良いと思える人間で、本当に良かったと思います。

 笑顔にときめき、言葉一つで舞い上がって、少し不器用な優しさを本気で好きだと思える人間で、本当に良かった。


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