過去ログ - 水本ゆかり「恋の話、聞いてもらえませんか」
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13: ◆J6sXPQ/xjk[saga]
2014/10/19(日) 23:49:30.61 ID:0gxa3WZjo

P→

 とりあえず人死にが出なくて良かった。

 それにしても、ゆかりがそんなふうに思っていてくれたなんて、まさかまさかの展開だ。まさかの展開過ぎて、まともな応答が出来なかった。

 好きだと言われると、え、嘘、なんで俺なのと疑念を浮かべてしまうくらいにはネガティブな俺です。

 格好のついた一言を言うでもなく、気の利いた台詞を吐くでもなく、ただただ恋愛べたな阿呆野郎っぷりを晒すだけになってしまった。

 確認作業を経ても実際に「さあ飛び込んでおいで」なんて度量を見せられるわけもなく、本当にただのへたれですね。

 しかし阿呆でへたれな俺だって、やはり少しくらいはプライドのある「男の子」とかいう生き物なわけで。

 年下の女の子が、勇気を振り絞って想いを伝えてくれたのだ。それに対して不安にさせたまま放置なんて事が出来るほど、男が廃ったつもりもない。

 事務所に戻ったら、俺が思っていることも包み隠さず全て話そうと思う。一回りも年下の子に何を馬鹿なこと言ってるんだと、ゆかりは笑わないだろうけど、まあ笑ってくれても構わない。ゆかりの笑った顔、好きだから。

 ふと左手の端に、冷たくてやわらかいものが触れた。隣をゆかりが歩いているとはいえ、手と手がぶつかるような距離ではない。それでも触れたということは、つまりそういうことな訳で。

 冷たくなった指先を掴み、軽く引き寄せ手の平を重ねる。力を込めない、ただ触れ合っているだけの握り方。

 そのまましばらく、事務所までの道のりを並んで歩いた。風の冷たさが気に留まらなくなったのは、太陽が照らしてくれているからという理由だけではない。

「私、必ずなります、トップアイドルに」

 頬を朱に染め、決意を込めた声音を以って、ゆかりがぽつりと呟いた。


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