過去ログ - ロールシャッハ「シンデレラガール?」
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53: ◆v.By3fESrTsY[saga]
2014/11/04(火) 23:59:41.16 ID:z+djFstk0
『日誌 2×××年 □月○日 ロールシャッハ記

久々にペンを走らせる。この手帳もようやく日記らしくなってきた。
向かう場所は桃源郷だ。諦めと退廃の後に辿り着く一抹の夢。
馬鹿げている。それに囚われる人間も、それを生み出すあの子供たちも。

あの男もその口だろう、夢に溺れ、この世界を受け入れた狂人だ。

『輝きの向こう側へ』

会場の入口にはそんな文句が記されている。…星の輝きなど一瞬だ、人ならなおさらに。

シンデレラは幸せだったか? 灰を被り、母を殺し、何もせぬまま、ただ流された淫売が?』

そこまでペンを走らせたところで肩を誰かに叩かれた。
振り向くとプロデューサーが立っている。コシミズを庇うときに負ったと思われる傷は包帯で隠されていた。

…待て、何故この男が俺の肩を叩く?
この男の前で俺が顔を脱いだことは無い。まさか、コイツもあの男の仲間か?

その疑問に答えるようにプロデューサーは慌てたように手を離した。

P「あ、すいません…知っている人に見えたもので」

ロールシャッハ「…いや、構わない」

俺の答えにプロデューサーは首をかしげる。

P「…あれ、でもその声、いや、違うよな、…警備員さんはちゃんといたし」

その言葉は、聞きのがすことは出来ない。
プロデューサーの肩を掴み、問いかけた。

ロールシャッハ「…そいつは何処へ行った」

P「へ? け、警備員さんのことですか?」

ロールシャッハ「ああ」

P「関係者通路で見かけましたけど…あの特徴的なマスクで顔パス状態になっているので…」

…俺の顔を持ち去ったのはそういうことか。クズが。
もっとも、俺の顔を盗んだところでヤツには何も出来はしまい。
あれは、俺の顔なのだから。

準備は万全だ、関係者通路に目星をつけ、走り去る。

だが

P「警備員さん、お気をつけて!」

プロデューサーがそう叫ぶと共に『STAFF』と記されたカードを投げてくる。

ロールシャッハ「…」

何故分かった? 俺の考えを読んだのか、初めて会った時と同じ表情でプロデューサーは答える。

P「あはは、職業柄人を見る目には少し自信がありまして。アナタは最初に会った時から凄く強い何かがありましたから。間違えるはずはないですよ」

腑抜けた笑み。だが、その眼鏡の奥は凛と光を持っている。センカワの目とは対照的な、しかし同じ光。

P「そうだ、このライブが終わったら、アイドルになってみませんか?」

ロールシャッハ「断る」

何を言い出すかと思えば、この男は少し頭がトンでいるのかもしれない。

P「…でしょうね、でも、アナタにはあの子たちと同じものを感じる」

ロールシャッハ「…何?」

P「何かを変えたい、残したい、伝えたいという強い思い、…なんて。気障ですかね」

俺は答えを返さない。センカワの言葉が一瞬思い出された。
…馬鹿な、ふざけたことを。俺とアイドルが似ている? 笑わせてくれる。

P「…終わったら帰ってきてください。アナタと同期の志保ちゃんも、アナタに生意気を言っていた幸子も、アナタに興味を持っていた真奈美さんも、心配していましたし待っていますよ」

背中を向けた俺にプロデューサーは最後に告げる。
…おそらく俺が帰ることは無いだろう。


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