過去ログ - 勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」
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106:名無しNIPPER[saga]
2014/12/24(水) 00:22:47.64 ID:agZ8HDU50
獣王「さて、まずは…かつての魔王を退けた『伝説の勇者』から受け継ぎしその力を見せてもらおうか」

 獣王はそう言うと両手を広げ、勇者たちを迎え入れるかのような動作をした。

獣王「初撃、我は貴様らの攻撃を防御せん。存分に力を振るうがいい」

戦士「なに…!?」

武道家「随分と見下してくれるな獣王とやら」

獣王「おお、気分を害したならすまないな。しかし許せよ。我を脅かす強敵との仕合など久しくてな。ただ漫然と殺しあうのも勿体無いと思ったのだ」

武道家「ならばお望み通り」

戦士「我らの剣を受けてみろ。後悔するなよ、獣王!!」

勇者「ま、待て二人とも!!」

 勇者の声などお構いなしに、武道家と戦士は駆け出す。
 一瞬で獣王との距離を潰し、先に拳を振るったのは武道家。
 渾身の力を持って振るった拳は、しかし獣王の毛皮をわずかに凹ませることも出来なかった。

獣王「何やらゆっくりと歩み寄って来て何事かと思ったら、指圧によるマッサージをするつもりだったとはな。何故いきなり我を歓待する?」

武道家「な…に…?」

 戦士の振り下ろした大剣は、獣王の肩に衝突して止まった。

獣王「こちらも突然の肩たたきか。これは戸惑うばかりだ。貴様らは我ら魔王軍を倒すために旅を続けているのではなかったのか?」

戦士「馬鹿な…」

 四人の脳裏をよぎったのは、昨日の騎士との仕合の記憶。
 拭い去りたかった、圧倒的な敗北感。

獣王「意図は読めぬが褒美は取らそう。頭を―――撫でてやる」

 直後、獣王の右腕が消えて―――戦士と武道家が洞窟の入り口、その岩壁に叩き付けられた。

勇者「な…あ…?」

戦士「………」

武道家「………」

 衝突により岩壁から剥がれた石の欠片が戦士と武道家の頭に落ちる。
 が、二人とも何の反応も示さない。

勇者「は…が…ぐ…そ、僧侶ちゃん、か、回復を……」

僧侶「は、はいぃ!」

 極度の緊張によるものか、カラカラになって貼りついたようになった喉で、勇者は何とか僧侶に指示を出す。

獣王「くっはははは!! これは面白い!! 何とも秀逸なパフォーマンスよ!!」

獣王「見事な『死んだ振り』だ!! よもや貴様ら、芸で路銀を稼いでおるのか!? かっははは!!」

 獣王は腹を抱えて笑っていた。
 獣王が笑う意味を、勇者は理解できた。
 理解できてしまった。




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