過去ログ - 勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」
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798:名無しNIPPER[saga]
2015/11/23(月) 19:19:21.53 ID:ZUaUlY1C0
 その町は綺麗で見事な城壁に囲まれていた。
 しかし肝心の正面入口の門が開け放たれている。これでは何者の侵入も拒むことは出来まい。
 門を潜った所で、勇者達の耳に、トッ、トッ、と軽やかな足音が届いた。
 見れば、三体の狼型魔物が勇者達に向かって街路を駆けて来ていた。

狼型魔物「ガルルッ!!」

 唸り声を上げて狼型魔物が突っ込んでくる。
 武道家は真っ先に飛び込んできた狼型魔物の牙をするりと躱し、その背中に拳を打ち下ろした。
 べぎぎ、と骨の砕ける音がして、狼型魔物の体が地面に強か叩き付けられる。
 その衝撃で内臓も潰れたのだろう。魔物の口から赤黒い血がどろりと零れた。
 それを見て咄嗟に勇者達から距離を取ろうと身を翻した二体の魔物達であったが、もう遅い。
 二メートルにも及ぶ戦士の大剣の射程圏から逃れることは叶わず、二体の魔物は纏めて戦士によって薙ぎ払われた。
 それぞれ二つ、都合四つに分かたれた肉塊がぼとぼとと地面に落ちる。
 辺りを見回して周囲に他の魔物がいないのを確認してから、勇者は顎に手を当てた。

勇者「門が開きっぱなしになってるから、魔物たちのいい棲家になっちゃってるみたいだな」

武道家「しかし妙だな。建ち並ぶ家々に全く損傷が見られない。滅んだ、というから、もっと破壊された町並みを想像していたんだが」

勇者「確かにそうだな。勝手に魔物に滅ぼされたって想像してたけど、疫病や飢饉で滅びたのかも……これだけ寒いと食糧調達も大変だろうし」

 きょろきょろと町を観察していた勇者は、城壁の内側に上に上がるための梯子がかかっているのに気が付いた。
 これなら町の全容を見渡せるのではと思いたち、勇者は梯子に足をかける。
 十分な高さまで上がった所で、町の方を振り返った。
 人口規模はおよそ一万人弱、といったところだったのだろう。
 建ち並ぶレンガ造りの家々。やはり寒さに備える為か、木造の建築物は殆ど見当たらない。
 町の先には見事な城が聳え立っている。
 勇者は信じられない、と頭を振った。
 ここから見える景色は見事なもので、荘厳で、美しくさえある。
 なのに。

勇者「本当に滅んでるのかよ、ここ……」

 勇者の背がぶるりと震える。
 それは決して、吹きすさぶ寒風によるものだけではなかった。



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