過去ログ - 勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」
1- 20
807:名無しNIPPER[saga]
2015/11/23(月) 19:27:50.40 ID:ZUaUlY1C0
 町を囲う城壁を抜けた所で、ちょうど別行動をしていた武道家と合流した。

武道家「ぐるりとこの城壁の周りを回ってみたが、勇者、お前が言うような跡はどこにも無かったぞ。綺麗なものだった」

勇者「そうか……」

 応える勇者の言葉は重い。
 何かあったのかと問う武道家に、戦士と僧侶から勇者が城内で得た情報が伝えられた。
 勇者がそうであったように、勇者から話を聞いた戦士と僧侶もそうだったように、武道家もまた、言葉を失ってしまう。
 重苦しい雰囲気を打ち破るように、勇者は宣言した。

勇者「これから再び親父の、『伝説の勇者』の伝説を辿る。そして、『光の精霊』の加護を獲得するんだ」

 光の精霊。
 それは、精霊の頂点に立つ、神にも等しい存在と伝えられる。
 その加護を得ることが出来たのは、この世で唯一、『伝説の勇者』だけだ。

勇者「現状どこで光の精霊に接触できるかもわからないし、正直雲を掴むような話だけど、やるしかない。精霊剣を手に入れることが出来ないと分かった以上、何か別の力を手に入れる必要がある。なんせ―――」

 勇者は背後の『滅びた国』を振り返った。

勇者「国一つをまるごと暗殺するような奴が敵にいるんだ。今のままじゃ、俺達は絶対に勝てない。俺達は今よりもっともっと強くならなきゃならないんだ」

 勇者の言葉に、武道家、戦士、僧侶の三人は力強く頷いた。
 勇者達は『滅びた国』を後にする。
 最後に、勇者はもう一度その国を振り返った。
 たくさんの人が死んでいた。多くの者が魔物に遺体を貪られていた。
 決して少なくない人数が死後の尊厳を汚されていた。
 成程、ここは確かに地獄だった。
 少なくとも勇者にとってはそうだった。勇者にはその光景はとても耐えられるものではなかった。
 鼻の頭がツンと熱くなる。込み上げる涙を必死に抑えながら、勇者は『彼』の名前を呼んだ。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/896.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice