過去ログ - 勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」
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885:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/11(月) 23:48:58.81 ID:50uoFRyB0
 武道家が僧侶を連れてきたのは、王宮の裏庭だった。
 裏庭といってもそこは日当たりも良く、よく手入れされた花壇に色とりどりの花が咲き乱れている。

僧侶「うわぁ〜! 綺麗!!」

武道家「城の兵士からこの場所を教えてもらってな。お前にも見せてやりたいと思ったんだ」

僧侶「だったら、戦士も連れてきてあげれば良かったのに。あの子、ああ見えてちゃんと女の子なんですから、こういう綺麗なお花とか大好きなんですよ?」

武道家「ああ、まあ、それはそうなんだが……その、お前と二人きりになりたくてな」

僧侶「えっ…?」

武道家「言うべきかどうか、非常に迷ったんだがな……」

僧侶「えっ、えっ?」

 武道家がワシワシと頭を掻いて言いよどむ。
 そのただならぬ雰囲気に僧侶の顔も知らず紅潮していた。
 ひとつ大きく息を吐いて、武道家は意を決して口を開く。

武道家「俺はお前のことが好きだ、僧侶。明日の作戦が成功し、無事生還出来たら―――俺と夫婦になってほしい」

僧侶「……ッ!!」

武道家「突然こんなことを言い出して、本当にすまんと思う。だが、明日は間違いなくこれまでにない激戦になる。正直、俺も命を落とす可能性が高い。だから、その前にどうしてもこの気持ちを伝えたかった」

 余りの衝撃に僧侶は絶句し、言葉を紡げないでいた。
 僧侶の大きな瞳にじわりと大粒の涙が浮かびだす。

武道家「……ッ、驚かせて、困らせてすまない。自分の気持ちに整理をつけたいだけの卑怯な自己満足だ。すっぱりと振ってくれて構わん」

 ぽろぽろと涙を零しながら、僧侶は首を大きく横に振った。

僧侶「違ッ…違います…私、嬉しいんです…! 武道家さんが私と同じ気持ちでいてくれたことが、ホントに嬉しいんです……!」

武道家「そ、それじゃあ……」

 不安に陰っていた武道家の顔が、ぱあ、と明るくなる。

僧侶「でも…駄目なんです」

 しかし、僧侶の口から零れたのは否定の言葉だった。

僧侶「武道家さんは、本当の私を知らないから……私が本当は、どれだけ汚れているかを知らないから……だから……」

武道家「……以前も確か、そんなことを言っていたな。どういう意味か、聞いてもいいか?」

僧侶「……ええ。聞いてください。むしろ、聞いてほしい。私という人間の全てを知って……それから、武道家さんのお気持ちをもう一度聞かせてください」




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