過去ログ - 小説的なやつ
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14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/11/05(水) 20:32:12.07 ID:7XpzpOnTO

映画といえば、彼女はよく同じ映画をかけていた。
そしていつも同じ場面で泣いていた。

その映画は悲恋の物語だった。
物語終盤の、売春婦に身を落としたヒロインが、汚れて老いていくのを花が枯れていくカットを使って表しているシーン。
紅いバラの花がくすみ、黒っぽくなって、水分が失われていく。
途中途中に女の苦悶の日々が無音で挿入される。
やがて花弁は零れ落ちて虚しい音を立てる。
その場面を見て彼女は眼を赤くして涙を幾筋か流す。
僕はその瞳と滴に見惚れた。

彼女が僕の部屋に来るようになってから、僕はお調子者のふりをすることが少しずつ減っていた。
おかげで少し交際が減った。
そしてその程度で切れる人間関係は特に必要なものでもないことを知った。

今年は熱い夏だった。
テレビでは引っ切り無しに熱中症で亡くなった人々を取り上げていた。
西日本では水が不足しているらしかった。
僕はアパートの近くにある区の図書館で勉強していた。
前期末試験の半ばだったからだ。

勉強に一段落つけてアパートに帰ると、彼女が円筒形のプラスチックから生える植物を抱え、僕の部屋の玄関前にうずくまっているのを見つけた。

「お帰り、今日は暑いね」

彼女の額を汗が伝っていた。
暑さに弱りながら微笑む姿は何だか美しかった。

「連絡を入れてくれればよかったのに」

「待ちたい気分だったから。
待つだけ待って、結局あなたが来ないなんてことを考えながらね」



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