13: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/11/21(金) 22:22:00.73 ID:kVCj7/h70
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「こんにちは、阿良々木先輩。ご機嫌は麗しくないようで」
僕が化物として生きることを決めた翌日、扇ちゃんはふらりと僕の前に現れた。
ひたぎにも内緒で家を出た僕とピンポイントで鉢合わせるあたり、扇ちゃんらしいと言えばらしい。
「本当に良かったんですか?」
いい訳ないだろう。
けれど、他に選択肢なんてないように思われた。
「本当に愚か者ですね貴方は。そんなのだから私のような存在を産み出してしまうんですよ」
扇ちゃんが、怒っていた。
珍しいどころの話ではない。
あの、どんな時でも窪んだ瞳で怪しげに嗤う印象しかなかった扇ちゃんが、怒りという感情を顕にしていたのだ。
と思いきや、一転、すぐに元の笑顔に戻る。
「貴方は自惚れが過ぎますよ。何でもかんでも自己完結させてしまうからこんなことになるんです」
自分の片割れからの言葉は、より深くはらわたを抉る。
けれど、僕にはこれ以上の答えなんて出せそうにない。
「じゃあこうしましょう。忍ちゃんに血を全部吸ってもらって完全な吸血鬼になり、戦場ヶ原先輩も阿良々木先輩Jr.も吸血鬼にしちゃいましょう」
それは、とても魅力的な提案に聞こえた。
だが僕にとって、というだけだ。
それでは何の意味もない。
僕もひたぎも忍も全員がハッピーエンドで終われる。
そんな選択肢があるのならば、とっくに選んでいる。
そう。
『吸血鬼なんて可哀想な生き物になるのは僕だけでいい』。
「阿良々木先輩の愚か者」
その言葉には、侮蔑の響きが含まれていたのだと思う。
そんな事は、キスショットに出会ったその瞬間に、理解している。
理解している、つもりだ。
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