過去ログ - 阿良々木暦「こよみヒストリー」
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16: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/11/21(金) 22:30:39.59 ID:kVCj7/h70



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「……阿良々木さん」

八九寺に背後から声を掛けられたのは、墓標の前で手を合わせている時の事だった。

「阿良々木さん、この度は」

振り返り八九寺に居直る。八九寺は、顔を伏せ次の言葉を探しているように見えた。

いいんだ、八九寺。

いずれこうなる事はわかっていた。

まず初めに、千石が逝った。

次に老倉が逝った。

神原が。

火憐ちゃんと月火ちゃんが。

羽川が。

忍野や臥煙さんたちは良く分からない。
年齢的にはとっくに寿命は尽きていても全くもっておかしくはないが、ひょっこり生きていたりする気もする、と思わせるあたりが彼らが彼らたる所以だ。

そして先日、ひたぎが逝った。

特に何かあった訳ではない。
全員が全員、天寿を全うしてくれた。
それだけで、僕にとっては充分な程の感謝を捧げたい。

僕の子供については、生きてはいるが、会ってはいない。
流石に一切年を取らない家族がいては社会的にも問題だ。
子供には僕は死んだことにしてある。
それでも約束通りひたぎだけとは会ってはいたが、やはり自分だけ老けずにいる、というのはことの他、中々に辛いものがあった。

「これから、どうされるので?」

特に考えてはいなかった。僕が今の今まで欠片でも人間として生きてこられたのは、ひたぎや友人たちのお陰だ。
その彼らがいなくなった今、僕を人間側に留めるものはない。

化物として生きて行くくらいならば、このまま、死んでしまおうか。

それもいいかと思ったけれど――。

そんなことしたら、地獄でひたぎに殺されちまう。

旅にでも出ようかな。

あの風来坊が、怪異という理不尽に覆われ助けを求める誰かを探していたように。

「そうですか。私はいつでもこの辺りにいますから、また見かけたら声かけてくださいね」

神様としての格も上がって管理範囲広がったんですよ、と鼻息も荒く無い胸を張る八九寺。

八九寺は八九寺なりに、僕を慰めてくれているらしい。

勿論、その時はお言葉に甘えてそうさせて貰おう。





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