18: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/11/21(金) 22:37:36.57 ID:kVCj7/h70
「お前様がひとつの怪異として存在を確立したということよ」
妖艶にも舌舐めずりで砂糖を舐め取ると、そんなことを宣った。
「人間でもない。吸血鬼でもない。『阿良々木暦』という怪異の誕生じゃな」
性質のそれは吸血鬼に近いがの、と忍。
だから、忍が離れたのだろう。
言ってしまえば、忍と二人でひとつの吸血鬼もどきという存在だった僕が、長い時を経て『一人前』の怪異として成立してしまった。
人を食わない。
血も吸わない。
太陽にも灼かれない。
海も渡れるし、にんにくも効かない。
ただ、死なないだけ。
あまりにも中途半端な怪異だ。
でも、僕らしいじゃないか。
忍は、これからどうするんだ?
「儂はもうキスショットとして生きて行くつもりは微塵もありはせんよ」
その言葉は素直に、嬉しかった。
忍とは呆れるほどに長い付き合いになったけれど、考えていたことは一緒だったのだ。
僕は中途半端な化物として。
忍は忍として。
あの日、街頭の下で契りを交わした時から、それは不変のものだったのだ。
例え離れ離れになったとしても、僕と忍は綺麗に歪な縁で結ばれている。
それだけで、充分だ。
「じゃあの、『阿良々木暦』よ」
残りのドーナツを僕の手から掻っ攫い、忍は手を振る。
気の遠くなる程、いつ死ねるかも分からないこの身ならば。
また何処かで一回くらい会うこともあるだろう。
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