52:>>48[saga]
2014/11/27(木) 00:01:51.54 ID:6pDyQ85i0
『その人はとても愛国心が強いの。アメリカの誇りを持って国歌を歌い、愛する母国のために軍へ入り、アメリカのために戦ってきた』
『そんな人間が、ある時突然自分はイタリア人だと言われたらどう? その人のアメリカ人としてのアイデンティティは短時間の間に築き上げられたものじゃない』
『幼少期からの長い時間を経て熟成され、肯定され続けたもの。今のアメリカ人としての自分である自分が偽者だと言われても』
『たとえアメリカ人としての心が誰かに埋め込まれたものだったとしても、自身がそうであると認識している限り突然に降って沸いた新たなアイデンティティにそう簡単に乗り換えられるものじゃないわね』
『けどね、これならまだマシな方』
『あれは違った。世界は主観でしか見ることができない。何をするにも基準には自分という存在がある』
『自らの自己への認識が狂い、自己の確定ができなくなったものは崩壊を起こす』
『自分である自分ではなくなった自分は乗り上げる岸を求めて漂流を始めた』
『そうなってしまえばもう自分の全てが疑わしくなる。そしてそもそも、それ以前の疑問さえ浮かんでしまう。いえ、正確には突きつけられた』
『「自分が流れ着く先は、そもそも本当に岸なのか?」……ってね』
『ほら、それでも自分という存在は確かにある。「われ思う、故に我あり」ってやつね』
『でも……「あなたは誰か」と聞かれて、一応の答えすら出せない状態では自分を保てないわけよ』
『「あなたは誰か」と聞かれたら、名前を言う。完璧ね。子供ですと言う。合格よ。男ですと言う。問題ないわ。アメリカ人ですと言う。OKよ。西洋人ですと言う。いいじゃない』
『けど、それ以前の枠組みさえ確定できないのであればどうしようもない。そこに放り込まれてしまったら詰み同然。どこにも帰着できなければ彷徨い続けるしかない』
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