過去ログ - 奈緒「今宵」凛「月が見えずとも」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/11/24(月) 01:36:40.33 ID:8/smB21Qo
初めて会ったときの印象は、そんなに良くなかったんだ。
でも気がついたら、あいつのことをずっと目で追っているあたしがいて。

多分、初恋だった。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:37:56.28 ID:8/smB21Qo
改札を出ると、秋の冷たい風があたしの頬を撫でた。
さむ……と呟きながら、マフラーを巻き直した。
コードが引っ張られて外れたイヤホンから漏れるのは、車内でずっとループ再生していた、君の知らない物語。
歌詞につられて空を見上げたけど、千葉の夜空は厚い雲に覆われて、星を見ることはできなかった。

以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:39:28.30 ID:8/smB21Qo
次の日の朝。

電車の中で居眠りをしながら、今日も音楽の波に身を委ねる。
蒼穹のサビで意識が覚醒するとちょうど乗り換えの駅で、あたしは慌ててホームに飛び出た。
twitterに晒されるかなあ、と一瞬思ったけれど、今は仕事場に向かうのが先だった。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:41:42.32 ID:8/smB21Qo
「……ちょっと、奈緒?」

どんな喧騒の中だって聞き分けられる、透き通るような声。
後ろを振り返ると、彼女はポスターとは違い、何か複雑そうな表情をしていた。

以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:43:09.57 ID:8/smB21Qo
別に冷やかすつもりは無いんだけど……と言いかけて、言葉を選びなおす。

「似合ってると思うけどな、白いドレス。あーあ、あたしも着たかったなあ」

「ありがと。奈緒ならきっと、すぐに着れるでしょ」
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:46:04.81 ID:8/smB21Qo
渋谷凛。
プロデューサーが育て上げた最初のアイドルにして、三代目シンデレラガール。
事務所の看板娘。トライアドプリムスのセンター。

プロデューサーが異性として意識してる女の子。
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/11/24(月) 01:46:59.64 ID:s9Ky4TuDO
ほう


8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:48:32.78 ID:8/smB21Qo
最初は、なにかの勘違いだろうと思っていた。
あたしもいつか、少女漫画みたいな恋愛をするのだろうと、漠然と思っていたから。

だけど胸の中の気持ちに気づいたら、後はもう、落ちていくだけだった。
たぶんきっと、許されない恋。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:49:08.27 ID:8/smB21Qo
あたし自身、はじめから叶う恋だとは思っていなかったんだ。
それは、あたし達の性別のことはもちろんだし、アイドル同士ってこともあるんだけど。

一番のネックになっていたのは、凛があたし以外の人に恋をしている、ということだった。
それも、向こうは向こうで凛のことを好きな上に、アニメの主人公か、ってくらい優秀ときてる。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:50:03.94 ID:8/smB21Qo
ベッドに沈んで、雨が窓を叩くビートの代わりに、仮歌が入った新曲のデモを身体に染み付かせる。
また、恋の歌だ。アイドルは、恋の歌を歌うべきなんて決まりでもあるのだろうか。

デビュー曲を渡された時は、プロデューサーさんからの嫌がらせか何かと勘ぐったものだ。
最近はアニソンも歌わせてもらっているから、恋心に気づかれてるということはないはずだけど……
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:51:00.88 ID:8/smB21Qo
スマホが震えた。LINEを確認すると、凛から「今通話してもいい?」のメッセージ。
深呼吸して、思考を落ち着かせる。
余計なことを言ってしまわないように、あたしは通話ボタンを押した。

「……もしもし、凛?」
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:52:19.00 ID:8/smB21Qo
聞かなくても、泣いている理由はなんとなく分かった。
凛がこんな風に、あたしに対して弱いところを見せるのは、あの人関連で何かあった時だけだった。

「……いつもごめん、奈緒」

以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:53:18.70 ID:8/smB21Qo
「私が加蓮に、そういうのやめてよって言ったら、『だって、つき合っているわけでもないんでしょ? 私がアプローチかけて何が悪いの?』って……気がついたら私、加蓮の頬叩いててさ。ケンカしてたら、プロデューサーが騒ぎに気づいて入ってきて……」

理由が理由だ、あの人に詳しく話すことはお互い躊躇われたらしい。

「頭冷やせって、怒られちゃった……電話かけても出てくれないし……私、どうしたらいいんだろ……」
以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:55:11.04 ID:8/smB21Qo
「加蓮の気持ちも、あたしはなんとなく分かるかな。自分の気持ち伝えてもはぐらかされて、ちゃんと失恋させてもらえないって言ってたし」

あの人にはあの人の事情があるんだろう。
凛のアイドルとしての活動に支障が出ないように、とか。加蓮がアイドルを辞めないように、とか。

以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:57:06.46 ID:8/smB21Qo
あの人と凛の煮え切らない態度が、あたしにとってはたまらなく不愉快だった。

何が「凛は俺のモノってわけじゃないから」だ。
現場で俳優が凛にナンパしてる時、露骨にイライラしてるくせに。

以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 01:59:32.63 ID:8/smB21Qo
アイドルとプロデューサーの関係だし、まだ凛は高校生だから。
時が来るまでは、お互い自重していよう……そんなことを言われたと、凛は言っていた。

でも……なら、だったら、アタシはなんだ?
世間から見れば、アタシの想いの方がよっぽど、受け入れられないモノだっていうのに。
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 02:02:28.42 ID:8/smB21Qo
もしも、プロデューサーがどうしようもなく嫌な奴だったなら。
あたしは何も悩まずに凛を奪ってしまえたかもしれない。

でも、いくらもしもの話をしたって、現実は変わらない。
あたしは魔法少女でも、リーディングシュタイナーでもないから。
以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 02:04:09.49 ID:8/smB21Qo
現実は、アニメのように都合よくはできていない。
あたしが主人公の物語じゃないから……ってのも、原因かもしれない。

百合アニメのように、世界の女の子が皆、同性を好きになるなんてこと、ない。
そんなのは、分かってたことだった。


19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 02:11:01.56 ID:8/smB21Qo
それから数日。
凛と加蓮は表面上、休戦状態になっているらしかった。
ただ、あの人と凛の間にはまだ若干のわだかまりがあるらしく。
会話や凛の動きがぎこちないモノであることは、誰の目にも明らかだった。

以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 02:11:48.31 ID:8/smB21Qo
気分転換に、どこかに寄って帰ろう。
あたしの提案に、凛は黙って頷いてついてきた。

カラオケって雰囲気でもなかったし、落ち着いた雰囲気の喫茶店に入って、コーヒーとケーキを注文する。

以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/24(月) 02:13:51.73 ID:8/smB21Qo
「あんまり悲しいこと、言うなよな。凛とユニット組めてるの、結構嬉しいんだから」

「あ……ごめん。トライアドが嫌ってわけじゃ、ないんだけど……」

非常に癪ではあるけれど。
以下略



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