7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/25(火) 02:40:14.65 ID:a4v2ARuR0
「おはよう、如月さん」
「どうも……」
先月の臨時の人事異動で隣の席の男性が地方支社へ転勤になった事に伴って、私の隣は暫くの間空席だった。しかし、今日からは違う。総務課一番の噂好きとも言われる女性が隣に来てしまったのだ。
「やぁねぇ千種さん、朝から元気がないじゃない」
「いえ、私は」
「経理の金子さんなんて、昨日も女の子4人も侍らせて飲んでたのよぉ、しかも2人もお持ち帰りですって」
正直言って、煩い。仕事に集中したいのに、と思いながらもそれを口に出して言う事は出来ない。もし変な尾ひれ背びれが付いてしまえば社内中に悪評を流されるに決まっているのだ。周辺の同僚たちも、何となく憐みに似た目線を送ってくるのも気持ちが悪い。
「そういえば、聞いた?営業の尾畑課長、あの人一昨日、自分とこの若い男の子食べちゃったんですって」
下世話な、無責任な噂だ。当の本人も同じフロアに居ると言うのに肝の座ったものだ。
垂れ流される噂話を右から左へ素通しにしながらキーボードに数字を打ちこんで行くが、どうにも集中できない。途中、その当の本人達の一方、俗な言い方をするなら「喰われた方」の若手社員がちらりとこちらを見たのもその遠因かも知れない。端正な顔立ちの青年だが、果たしてそう言う趣味があったのかと要らない想像を働かせてしまう。
ようやく噂のマシンガンが途切れたのはこの島の監督者である課長が午前の打ち合わせから戻って来た時だった。静かになったと思いながら仕事を続けるが、どうしても先程の話が頭に引っかかっていた。
まさか、羨ましいのか。その行為が。
「……まさか」
「どうしました?如月さん」
声に出さない積りだった呟きは、今度は向かいの席に座る主任に聞こえていたようだった。慌てて何でもありません、と誤魔化すと、私はことさら集中してモニターを睨み付けるようにしていた。
あるはずが、無いではないか。
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