22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/27(木) 23:56:21.04 ID:McEK2sxMo
僕は僕らしくもなく口ごもったりもせず普通に彼女と会話ができていることに驚いてい
た。緊張から開放され身も心も軽くなったとはいえ、何度も聞き返されながらようやく告
白の意図が伝わった志村さんの時とはえらい違いだ。
そこで僕は気がついたのだけど、きっとこれはナオの会話のリードが上手だからだ。赤
くなって照れているような彼女の言葉は、実はいつもタイミングよく区切りがついていて、
そのため、その後に続けて喋りやすいのだ。
この時一瞬だけ僕はナオのことを不思議に思った。
わずか数分だけそれもろくに口も聞かなかった僕のことを好きになってくれた綺麗な女
の子。まだ中学二年なのに上手に会話をリードしてくれるナオ。
何で僕はこんな子と付き合えたのだろう。
それでも手を繋いだままちょっと上目遣いに僕の方を見上げて微笑みかけてくれるナオ
を見ると、もうそんなことはどうでもよくなってしまった。渋沢も言っていたけど僕には
昔から考えすぎる癖がある。今はささいな疑問なんかどうだっていいじゃないか。付き合
い出した初日だし、今は甘い時間を楽しんだっていいはずだ。
やがてホームに滑り込んできた電車に並んで乗り込んだ後も、ナオは僕の手を離そうと
しなかった。ナオは僕の手を握っていない方の手で吊り輪に掴まるのかと思ったけど、ナ
オはそうせずに空いている方の手を僕の腕に絡ませた。つまり揺れる電車の車内でナオを
支えるのが僕の役目になったのだ。
そういう彼女の姿を見ると最初に彼女を見かけたときの儚げな美少女という印象は修正
せざるを得なかった。むしろ出会った翌日に僕に会いに来たりメールで告白したり、彼女
はどちらかというとむしろ積極的な女の子だったのだ。でもその発見は僕を困惑させたり
幻滅させたりはしなかった。
むしろ逆だった。僕は積極的なナオの様子を好ましく感じていた。何となく大人しい印
象の女の子が自分の好みなのだと、今まで僕は考えていたけど、よく考えれば初めて告白
して振られた志村さんだって大人しいというよりはむしろ活発な女の子だった。
まあそんなことは今はどうでもいい。僕の腕に初めてできた僕の彼女が抱きついていて
くれているのだから。
「ナオちゃんってさ」
僕はもうあまり緊張もせず僕の腕に抱き付いている彼女に話しかけた。「そう言えば名
前って・・・・・・」
「あ、あたしもそれ今考えていました。ナオトさんとナオって一字違いですよね」
「ほんと偶然だよね」
「偶然ですか・・・・・・運命だったりして」
そう言ってナオは照れたように笑った。
「運命って。あ、でもさ。ナオって漢字で書くとどうなるの?」
そう言えば僕とナオはお互いの学校と学年を教えあっただけだった。これからはそうい
う疑問もお互いに答えあって少しづつ相手への理解を深めて行けるだろう。
「奈良の奈に糸偏に者って書いて奈緒です・・・・・・わかります?」
え。偶然もここまで来ると出来すぎだった。
「わかる・・・・・・っていうか、僕の名前もその奈緒に最後に人って加えただけなんだけど。
奈緒人って書く」
奈緒も驚いたようだった。
「奈緒人さん、運命って信じますか」
彼女は真面目な顔になって僕の方を見た。
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