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42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/30(日) 00:45:42.15 ID:jzMh8z1oo

 突然現われた奈緒の姿に驚いて固まっている僕に彼女は親しげな口調で言った。

「・・・・・・いつからいたの?」

「一つ前の駅から乗ったら奈緒人さんが目の前で寝てるんですもん。びっくりしちゃっ
た」

 奈緒は笑った。

「奈緒ちゃんはどこかに行くところ?」

 ようやく頭がはっきりした僕は相変わらず密着している奈緒に聞いた。

「ピアノのレッスンなんです」

 奈緒は言った。

「こんなに早くから?」

 僕は驚いた。僕にとっては土曜日の朝なんて十時ごろまで寝坊するのが普通だっただけ
に。

「毎週土曜日の午前中はお昼までレッスンなんです」

「大変なんだね」

 僕はそう言ったけど同時にコンクールの入賞のことを思い出して、それなら無理はない
なと思った。

「好きでやっていることですから」

 奈緒はあっさりと答えた。

「それよりも偶然ですよね。奈緒人さんはどこにお出かけなんですか。学校とは逆方向で
すよね」

 僕にぴったりと寄り添うように座っている奈緒と会話を始めると、さっきまで悩んでい
た明日香とのことも忘れられるようだった。

 でも、妹と一緒に家にいたくないから目的もなく外出しているとは言えない。

「いや、特に何でって訳じゃないよ。本とか探したくてぶらぶらと」

「本屋なら奈緒人さんの最寄り駅に大きなお店があるのに」

「たまにはあまり降りたことのない駅に降りてみたくてさ」

 苦しい言い訳だったけどどういうわけかその言葉は奈緒の共感を呼んだようだった。

「ああ、何となくわかります。あたしもたまにそういう気分になるときがありますよ」

「そうなの」

「奈緒人さんと初めて会った時ね、あの駅で初めて降りたんですよ。駅前の景色とかも新
鮮で何かいいことが起こりそうでドキドキしてました・・・・・・そしたら本当にいいことが起
こったんですけどね」

 奈緒は少しだけ顔を赤くして笑った。

「でも週末は奈緒人さんと会えないと思ってたから今日は得しちゃったな」

 それは僕も同じだった。妹のことで胃が痛くなって自宅から逃げ出した僕だったけど期
せずして奈緒に会えたことが嬉しかった。

「奈緒ちゃんのピアノのレッスンってどこでしているの」

「ここから、えーとここから四つ目くらいの駅を降りたとこです」

 僕は車内に掲示してある路線図を眺めた。

「降りたことない駅だなあ。あのさ」

「はい」

「奈緒ちゃんさえ迷惑じゃなかったらピアノの教室まで一緒に行ってもいい?」

「本当ですか」
 奈緒は目を輝かせた。「夢みたい。偶然電車で会えただけでも嬉しかったのに」

「そんな大袈裟な」


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