25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:00:15.94 ID:L4/wSLr5o
あの人の声は、色が、感情がよく見える。
初めて交わした言葉は、緊張の赤と、うちに隠れた橙色の熱意が混ざった花火。
私が仕事を選り好みして、たしなめられたときは、警告色の鋭い黄色。
失敗を慰めてくれた時は、いつまでも包まれていたいと思ってしまう森の緑。
私をステージに送り出す声は、私を信じてすべてを委ねてくれた、澄んだ青。
一度、プライベートであの人のためだけに歌ったときにくれた賛嘆は、吸い込まれそうな空に近い藍色。
あの人の声の色が、私のなかに塗られて、次第に濃くなっていく。
その色のどれもが、とてもきらきらしていて、
私のなかを覗いたら、万華鏡みたいになっているかもしれない。
『あなたの声で、私に色が塗られる』なんて言ったら、あの人はどんな顔をするかしら。
また変なことを言い出した、なんて思われたら。それは、少し辛い。
あの人は時々、私が話しかけた言葉を持て余す。そういうときに出る色は、少し濁っている。
まだまだ、あの人に塗られた色がある。
初めて、私が主役のライブで、大盛況のうちにフィナーレを迎えた後。
ステージから下りて、真っ先にかけられたあの人の声は、スポットよりも明るかった。
あの目映さが焼き付いて離れなくて、歌い出す度に記憶を反芻する。
上手く鮮明に描ければ、その日は何も恐れることがないの。
ただ、私のなかで一番濃い色は、もやもやと立ち上る紫だった。
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