29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:02:49.52 ID:L4/wSLr5o
ヘッドホンであの人の声を聞くと、すべてが私への囁きのように思える。
声だけじゃない。吐息までが、耳を撫でる。ちりちりとかすかに光る。
耳に一番近い頭から、紫の煙に包まれていく。
それは首から、肩を伝って、肺から心臓に落ちていく。
あの人の声から、こんな色を見るようになって、最近いろんな事の感じ方が変わってしまった。
ヘッドホンに押さえつけられた髪の毛がざわつく。うなじから肩甲骨の間が、紫の煙に舐められる。
目を閉じると、あの人の呟きに合わせて、肌を撫でられている錯覚がする。
目蓋の裏に見えるあの人。顔のそば、すぐそこにある。
首を伸ばせば、キスができそうなほど。そう感じられる。
私を包む紫は、わずかに粘性を増してきて、煙から濃い靄へ様相を変える。
首がおぼつかなくなって、椅子の背に後頭部を預ける。脳漿がぷかぷかしてる。
顔は上を向きながら、腰から下がどんどん沈んでいく。
あの人の声が、呪文のように取り巻いてくる。上も下も曖昧になる。
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