10: ◆FLVUV.9phY[sage]
2014/12/06(土) 16:38:55.03 ID:x2ueaAjJo
「その人を助けようとしてくれてありがとう。でも大丈夫よ、気絶しているだけだから」
「よ、よかったぁ。あの、その、それで今のって、夢……、じゃないんですよね?」
「そうね、残念ながら。……、あら、貴方、そういうことなのね。ごめんなさいね」
銃口が精確に少女の眉間へとあてがわれる。
「えっ?」
吃驚して、気の抜けた声が漏れ出した。
向日葵のような少女は憐憫と悲哀、二つが綯い交ぜになった表情で笑う。
桜を想起させる雰囲気の少女は戸惑い、見下す少女は躊躇をしなかった。
遅々として進まぬ時を傍観する少女は引き金に力が加えられるのを止める術を持たない。
「あなたは何をしているの?」
背後からの疑念。
少女は振り返り、少女は涙を流す。
絶対的な彼我の差が確かに存在していた。
「何って、何かしら。別に変ったことは何もしていないわよ」
その表情は非常に自然で明らかに不自然な様相を呈していた。
何故ならば極々自然な困惑の表情を浮かべていたからに他ならない。
視線を外したそのままで、蜂色の少女は引き金を引いた。引いてしまった。
柔らかく暖かな色味を纏った少女は一度だけ瞬き、首を捻る。
次いで右手に持った長銃を投げ捨て、頬を撫でる。
居るはずの人物は消え失せ、有るはずの飛沫は何も濡らさない。
軽く奥歯を噛み締めて頬を膨らませる。
同じ年頃の少女がすれば愛らしいであろうその動作は、足りない螺子の本数を写していた。
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