2: ◆FLVUV.9phY[sage]
2014/12/06(土) 16:31:10.96 ID:x2ueaAjJo
★◇
弾痕、跳弾。灰の床に煤と銃痕。
鈍色の礫が無尽蔵の孵化器を狙い撃つ。
だが、何か様子がおかしかった。
通常、あの白いセールスマンは逃げる時に此方を窺ったりせず、
一目散に一様に、計算通りの逃走経路をマニュアルの通りになぞる。
だからこそ、蓄積されたノウハウを使うことで手間をかけずに殲滅することが出来た。
そう、普段通りの赤目の奴らならば。
「お前たち、何か企んでいるの?」
暁と焔の少女は飛び出す近接武器をおもむろに降ろして問いかけた。
砂粒を踏み潰す耳障りな音が閑散と余韻を残す。
交錯、伝達。
不相応な奇跡を売り歩いている獣と、願いを噛み締め絶望に足掻く少女は、思惑を隠して視線を交わす。
「君は何者かな。奇跡の少女」
「私は暁美ほむら。叶わぬ願いを叶えられたあなた達の奴隷よ」
紫陽花色に身を包んだ少女は絶望の回収業者へと腕を掲げ、銃口を再度突き付ける。
「ボク達には君と契約した記録がない。その上で忠告を一つしておくよ」
「くだらないわね。私はもう誰に頼るつもりもないし、あなたの口車に乗せられるつもりもない」
「君の目的は知らないし、ボクからとやかくいう事は今のところ特には見当たらないけれど、
君はこの見滝原でやっていくつもりなんだろう? それならば、一つだけ言っておかないといけないからね」
「何を企んでいるのか知らないけれど、いう事があるのならば、さっさとして。私にはお前を生かしておく理由がないの」
空間が凍結する。接続された回廊は瞬間という時間を飲み下して、一瞬という永遠を引き延ばした。
天使に酷似した悪魔の使いは、小さく一言だけ告げる。
対する夜明けは冷笑し、一度だけ撃鉄を響かせた。
憎むべき人類の味方は自ら進んで死線へと身を置く。不必要なものは放棄する、その姿は奇妙にも潔い。
少女は薬莢と弾丸を拾い上げる。
頭の中では切り捨てるべき主人の放った言葉が反芻していた。
その言葉は、火よりも強いその少女を動揺させて、また思考の渦へとつき落とすには十二分な威力を誇っていた。
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