42: ◆FLVUV.9phY[sage]
2014/12/06(土) 17:20:20.81 ID:x2ueaAjJo
深雪の魔女。その性質は優しさ。
いい音も悪い音もその全てを降り積もる雪で覆い尽くして吸音させる。
慈悲と、慈善。だけれどそれは、あまりにも独りよがり。
「あら、これはまた、随分と似合わずに綺麗な景観だこと」
雪、雪、雪。
辺り一面は真白い雪で覆われている。
右を見ても、左を見ても、白い雪しかないその場所には、他には何一つも存在せず、誰一人もいる様子がなかった。
「それにしても、これだけ広いと、本体を探すのが面倒臭いわね」
どうしましょうか、とこれ見よがしに考える。
誰も見ていない筈なのに少女は何かを演じるように一人ごちる。
「でも、そうね。これだけ派手に暴れているのならば、その痕跡を辿っちゃえば簡単よね」
大きく、鼻から息を吐きだす。薄らと零れるような笑みは果たして何を映し出しているのか。
悠然と綽々と歩く暖かな色合いに包まれた少女は迷いなく結界を進んでいく。
一面の白銀世界、有って無いような方位関係。
もはや遭難したと言っても過言ではない状況で、迷いなく足を動かす。
時に右に、時に左に。
足元を確認することはあれど、上を見上げることは一切しない。
魔女の結界に置いて方角などと云うものは結界の主の気分で簡単にひっくり返る、
極めて信用ならないものというのは確かではある。
「へぇ、そういうことかしら。なるほどなるほど。とすれば、次はあっちね」
魔翌力の痕跡を探りながら、蜂蜜色の少女は得心する。
そして、ある地点で雪の中へとその手を盛大に突っ込んだ。
バサリッ、と少々の雪が辺りに飛び散る。
「うーん、どこかしら。多分あると思うのだけれど……、」
その手に何かが引っかかる。
迷わずにそれを掴むと、掴んだ腕を起点に体を大きく捻る。
そう、傍目には自分から雪に突っ込んだようにしか見えない挙動だ。
少女の体が雪へと沈み、ぐるりと視界が晴れる。
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