44: ◆FLVUV.9phY[sage]
2014/12/06(土) 17:23:07.27 ID:x2ueaAjJo
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その少女は魔女を追いかけて、隣町から魔境と呼ばれている地、見滝原へと足を踏み入れてしまった。
それに気がついたのは偶然だった。
魔女の結界が大型のバスターミナルなんて場所に入り口を開いていなければそんなことに気がついたりはしなかっただろう。
魔法少女を続けていれば嫌でも縄張り争いに関わってしまうときは来る。
そんなとき、この少女は決まって知らなかったと言って、戦いになる前にさっさと逃げだしていた。
無駄な争いは体力と魔翌力をいたずらに消費するだけだと思っていたからだ。
だが、そんなことを繰り返していれば同業者の中で悪評を受けるのは当然の帰結と言えるだろう。
そんないきさつで、最終的には徒党を組んだ魔法少女の一団に縄張りにしていた街を追い出される羽目になったわけだが、
当の少女は大して気にした様子もなく、あちらこちらの街を転々と放浪することに決めたようだった。
一つ所に固執しなければ争いに巻き込まれることも対して気にならず、のらりくらりとその日暮らしで生き抜いていける。
そんな彼女でさえ、一ヵ所だけ決して近寄らないと心に決めた場所がある。
それが、見滝原市だ。
風の噂によれば、この一年以内でその地に足を踏み入れた魔法少女は誰一人帰ってくることはなかったらしい。
何があるのかは定かではないが、何かがあるのは確かだった。少なくとも少女はそういう風に考えていた。
だから、何があるのか分からないその場所を危険地帯とみなして近づこうとはしなかったのだ。
だけれど、今回は結構と切羽詰った状況に陥ってしまい、仕方なしに魔女を探してあちらへこちらへ、と。
気がつけば見滝原の街に足を踏み入れてしまっていたという次第である。
そして、魔女旱で困っていたところに強力な魔女がお出ましになり、切羽詰った状況での消耗戦へと突入してしまう。
大きな魔法を使うことは出来ない。
かといって小技では魔女への致命傷を与えられない。
生か死か、極限の二択は、諦めるかギリギリまで濁る覚悟で仕留めるか。
しかし、少女がどちらかを選ぶことは結局のところ出来はしなかった。
なぜならば、少女の決死の選択よりも、魔女の挙動の方が数段上だったからに他ならない。
あぁ、もう死んだかな、と彼女は楽観的に死を受け入れた。
もともと、有って無いような命。
キュゥべえと契約して全てを失くした憐れ者、そう思えば何の感慨もない。
彼女にとってもはや生きることは惰性だったのだろう。
うつろう末路に目を閉じて、死を望む。
それは絶望にも似た達観だった。
さぁ、一思いに殺してくれ。そう願う彼女だったが、一向に体を貫く衝撃や痛みは訪れない。
その代りに、渇いた砲音が二度、残響した。
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