過去ログ - ほむら「向日葵と傷」
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57: ◆FLVUV.9phY[sage]
2014/12/06(土) 17:42:20.63 ID:x2ueaAjJo

 全てを失くしてしまった少女は、雪景色の中を一人で彷徨い歩く。
 茫然自失とした彼女はそれでも、何かのために戦っていると信じたくて。
 だけれど、信じられなくて、そしてそのままの精神状態で魔女と刃を交える。

 槍を振るうその手は鈍く、心を縛る呪いという鎖は魔法という力を封じる。
 手が切れる、頬が切れる、腹が切れる、冷気に体が凍る。

 絶望に圧し潰されながら、それでもがむしゃらに振るう槍がゆっくりと魔女を追いつめる。
 だけれど同時に、振るった槍の分だけ佐倉杏子の心もまた、追い詰められる。

 削り合った杏子と魔女はお互いに最後の一撃を入れる直前になって、暫し動きを止めていた。
 まるで互いの祈りを、お互いが叶えようとしている、そんな風にさえ感じられる。

 魔女の手が動き、受け入れるように小さく笑う杏子の体を引き裂こうとしたその瞬間、
魔女の背中に銃弾が撃ち込まれる。

 そうして、魔女は打ち滅ぼされた。巴マミの手によって。

「佐倉、さん」

「マ、ミ、先輩」

 マミが覗き込む瞳には色がなかった。

「アタシさ、もう駄目みたい。この間はあんなこと言ってゴメン。それは謝るよ」

「そんなことどうだって良いわよ。それよりも間に合って良かった。立てる?」

 マミは冷え切った杏子の体を抱きしめる。
 体温が伝い、暖かさを感じた杏子の目からは涙が零れる。

「でも、会えて良かった。アタシの最期、見届けてくれるのがマミ、おねぇちゃんで」

「佐倉さん? 何を言って……?」

 杏子は少しだけ微笑み、マミを突き飛ばすと自ら地面に体を投げる。
 そして、彼女のソウルジェムが投げ出され、弾ける。

「多分、これが魔法少女の、末路……」




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