過去ログ - ほむら「向日葵と傷」
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85: ◆FLVUV.9phY[saga]
2014/12/06(土) 19:27:05.31 ID:x2ueaAjJo

(織莉子の望んだ結末を手に入れられるのなら、私の命くらいちっぽけなもの、さ)

 彼女の体が落下すれば、作り上げた巨大な魔方陣も追従して、落下する。
 全てを囲うには一番確実で手っ取り早い。

 自由落下の速度の中でキリカのことを狙えるほど精密な動きをする使い魔は存在せず、
またワルプルギス自身さえそこまで高精度な攻撃は行えない。
 それどころか一発の威力が桁外れ過ぎて照準は非常に大雑把なのだ。だからこその、この一手。

 持続時間はたっぷり十分。
 注ぎ込んだ魔力量からすれば文字通りハエの止まるような速度まで落とし込むことが出来る。

(流石に魔力がすっからかんだ。グリーフシードのストックもないし、もうダメかな。
最後は織莉子と一緒が良かったんだけど、仕方ない、か)

 強烈な浮遊感がキリカの全身を包み込む。
 落下。現象としてはひどく単純なこの出来事は、単純だからこそ強烈に人を、人の心を飲み下す。

(あ、ああぁぁぁぁぁぁっ! だけどやっぱり織莉子に会いたい! もっと一緒にいたい! 
まだ何にもしてないんだよ! 一緒に遊んだり、出かけたり、買い物に行ったり、のんびりしたり! 
やり残したこと、いっぱいあるんだ。まだ会えたばかりなんだ、こんなちょっとじゃ私の愛は納まりがつかないよ! 
このまま死んでやるなんてやっぱりできない!
何か、これ以上ソウルジェムを濁らせずに取れる方策はないのか。
何かあるはずだ。考えろ、考えて周りをよく見ろ、私!)

 両手には大きく展開された爪。手を伸ばせば届く距離にはワルプルギスの巨体。
 今の距離ならば地面スレスレで減速が間に合うはずだ。

 ただし、真上から迫る使い魔の一団がそれを許してくれるだろうか。
 キリカが減速すればそいつらは間違いなくキリカを殺しにかかる。
 魔力が空の現状ではそれを防ぐ手立てはない。

 だが、それでも道路のシミになるという確定した死から、使い魔から誰かが守ってくれるかもしれないという不確定な可能性には変じられる。

 零か、小数点以下か。

「生きて、織莉子と一緒に未来を生きるッ!」

 少女は躊躇いなく魔女の巨体に鉤爪を突き立てる!
 不均一で耳障りな金属音が火花をかき鳴らし、キリカの体を減速させていく。

(あいつら、思ったより速い! このままじゃあの槍で下ろされる! 
だけど、もう身体強化に回す魔力なんてない! ちぃっ、やっぱりダメか!?)

 結局のところ、ダメなものはダメであり、一人の力ではどうにもならないものは、どうにもならないのである。
 奇跡的に攻撃が外れることもなければ、突然覚醒して魔力が回復したりもしない。
 何のことはなく、酷く現実的に物事は突然好転したりはしない。



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