1: ◆sIPDGEqLDE[sage]
2014/12/08(月) 05:01:01.61 ID:LDvEDIsh0
765プロに所属するアイドルの中で、唯一二十歳を超えている私は、たまにではあるが事務所へ帰るのが夜中になる事がある。
今日もそうだった。
他の娘達は一定の時間になると帰らされる中、私だけ残って収録という事は珍しい事ではない。
しかし最近、私達のプロデューサーである律子さんが結成した竜宮小町に選ばれてからは、一緒に活動する伊織ちゃんと亜美ちゃんに合わあせて早めに帰ることが増えた。
以前の様に遅くまで仕事をしているということは大分減ったが、それでも稀に、今日のように単独での収録や撮影なんかが入ると、こうして夜中に事務所へ帰って来ることになるのだ。
「ただいま戻りました〜」
事務所の扉を開くと、奥の方から慌ただしく駆け寄る足音が聞こえる。
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2: ◆sIPDGEqLDE[saga]
2014/12/08(月) 05:02:49.42 ID:LDvEDIsh0
「あ、あずささん!? どうして事務所に? 直帰でいいって言ったはずじゃ……」
駆け寄ってきたのは律子さんだった。
昼過ぎに私をテレビ局へ送ったあと、ずっとここにいたのだろうか。
3: ◆sIPDGEqLDE[saga]
2014/12/08(月) 05:03:54.03 ID:LDvEDIsh0
背越しに律子さんの声を聞きながら事務所の奥へ足を運ぶ。
律子さんのデスクには、栄養剤やコンビニのパン類などの袋が乱雑に端へ寄せられていた。
栄養剤の量的に、ここ二、三日の量ではない。
4: ◆sIPDGEqLDE[saga]
2014/12/08(月) 05:04:59.95 ID:LDvEDIsh0
「前から思っていたんです。私達が帰った後も、律子さんはお仕事しているんじゃないかって。ちゃんとお休みできてないんじゃないかって。無理、してるんじゃないかって」
律子さんは声を出さず、目を逸らしている。
5: ◆sIPDGEqLDE[saga]
2014/12/08(月) 05:06:50.25 ID:LDvEDIsh0
「どうしてそんなにまで……」
暫くの沈黙の後、律子さんは一度だけため息をついた後、観念したように話し始めた。
6: ◆sIPDGEqLDE[saga]
2014/12/08(月) 05:07:38.38 ID:LDvEDIsh0
「今まさに竜宮小町は正念場です。ここらで大きな仕事を取って成功させなければ、皆に先はない。これはそういうプロジェクトなんです」
自分が与するユニットに込められた意味。
そこに所属する重要性。
7: ◆sIPDGEqLDE[saga]
2014/12/08(月) 05:09:01.41 ID:LDvEDIsh0
「全部が全部嘘ではないですが、そこまで重い使命を与えたりはしません。少なくとも竜宮がダメで潰れたりはしませんよ、安心してください」
どうやらそこまで深刻な状態ではないようでほっとひと安心した。
8: ◆sIPDGEqLDE[saga]
2014/12/08(月) 05:11:48.29 ID:LDvEDIsh0
「私は、ただ、怖いんです」
「怖い……?」
9: ◆sIPDGEqLDE[saga]
2014/12/08(月) 05:12:40.08 ID:LDvEDIsh0
「だから私は、こうやって仕事に逃げてちょっとでも恐怖から目を背けたかったんです」
「そうだったんですか……」
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