過去ログ - やよい「ビジョナリー」
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15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/12/14(日) 17:32:00.06 ID:F6x1vvEx0





「こんにちは」





 誰もいないはずの公園に、男の人の声が響きました。

 びっくりして顔をあげると、私が座ってるベンチからちょっと離れたところに、男の人が立っていました。

 男の人は、若いお兄さんでした。スーツを着て、ネクタイをしめてて、革靴を履いてて、サラリーマンって感じです。

 初めて会う人だけど、あいさつされたので、いちおう返事をしなきゃと思いました。



「え、えっと……」

「それとも、もう夕方だから、こんばんは、かな?」

「あ、え……」

「こんばんは」

「こ、こんばんわ……」



 私があいさつを返すと、スーツのお兄さんはにっこり笑いました。

 夕陽でオレンジ色に染まった公園で、スーツのお兄さんがぽつんと立っているのは、なんだか妙な感じです。

 だけどお兄さんはそんなこと気にしないで、キャッチボールするくらいの距離から私に話しかけてきます。



「いやなことでもあったのかな?」



 そう訊かれて、私はやっと思い出したみたいに目元をごしごしぬぐいました。

 そして急に恥ずかしくなって、逃げ出したい気分になりました。

 でも、走って逃げたら失礼かな? もしかして、追いかけてくるかな?

 ううん、なんとなく、このお兄さんはそんなことしない気がする。

 私がどうしようかときょろきょろしていると、お兄さんは笑顔のままで、



「お名前を訊いてもいいかな?」

「え……」

「きみのお名前。お嬢ちゃんって呼ぶのは、なんだかおじさんっぽくてイヤなんだ」

「えっと、その、高槻やよいです」



 どうして知らない人に名前を教えちゃったのか、それは私にもよくわかりません。

 ただ、あのお兄さんの笑顔を見てると、なんだか安心してしまったんです。

 名前くらい、いいかなって。





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