16: ◆FLVUV.9phY[saga]
2014/12/13(土) 15:42:37.23 ID:d32EPYEGo
そうね、幸せで、いい。わけがなかった。
懐かしい記憶の微睡みから意識が舞い戻り、強烈な乖離感を味わう。
何も知らなかったあの頃。ただ、偽りの幸せを甘受出来てしまっていたあの頃。
なんて優しい夢なんだろうか。なんて幸せな夢なんだろうか。
だけれど、それはもう過ぎ去ってしまって手に入らない夢。
もう、あの頃へは帰れない夢。儚い記憶の中の幸せ。
あの時と同じ幸せを手に入れるはずの知らない明日をようやくと手に入れて、だというのに私の心は潰れそうだった。
だって、知らなかった。
知らなかったのよ、私が諦めて切り捨てた彼女たちがこんなにも重いものだったなんて。
幸せになることがこんなにも辛いことだったなんて。
私は頑張ったよね、それなのになんでこんなにつらい思いをしないといけないの。
もういやだ、いやだよ。こんなにつらいなら、こんなに苦しいのなら、もういっそ――――。
そこで、傍と気づく。駄目だ、私は絶望してはいけない。
それじゃあ何のための道程なのかと、何のための屍の山なのかと。
酷く濁ったソウルジェムにグリーフシードを押し当てて浄化する。
穢れを全て吸い取ってだけれどあと二回は使えそうなそれを引き出しへとしまい込む。
行き場のない感情が廻る。浅い息を整えて、思考を押し出す様に長く長く息を吐きだす。
吐く息と一緒にこの絶望も空気に溶けてしまえばいいのに、なんて考える。
31Res/28.30 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。