63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/12/14(日) 01:51:48.54 ID:QcmbvjXlo
「『貴方は独りじゃない』」
「私の知ったこの幸せを、温もりを」
「必要としてくれる誰かに出会えることができるのであれば」
「その人に寄り添って、お互いの温もりも喜びも悲しみも」
「何もかもを共有して、それでも生きていけることは」
「とても幸せなことですよ」
そういって女性は京太郎の正面に回り込むと
そのスラリと伸びた長身を、ゆっくりと抱きしめた
京太郎の胸板に顔を埋めて、心音を確かめるその様子は
もしこれで分からないのであるのならば
鈍感や朴念仁という言葉すら生温い
そう思わせるほどのアプローチに
京太郎はようやく自身の愚かさを思い至った
思い至り、けれど過去の行いは取り戻せないと振り切って
謝罪するよりもまず口を突いて出たのは
京太郎「……そう、か」
などという、全く気の利かない独り言のような声で
不意に零れ落ちてきた涙を拭うこともせずに
その理由を考えて、しかし分からなくて
涙を見られまいと女性を抱き返すことだけが
その時に唯一下せた理性的な判断であった
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